中国の経済危機で
高まる台湾侵攻の可能性

 最近、中国の台湾侵攻が近いとの分析が米軍関係者などから出ているが、中国経済の変調がそれをさらに早めるのではないかとの懸念の声も聞かれる。

 ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は、中国は過去数十年間好況をけん引してきたインフラ・不動産開発中心の成長が終わり経済危機に陥ったが、それがさらに悪化する場合には、台湾に侵攻するする可能性が高いと予想した。

 習近平主席は、中国経済の急成長を続けることで、米国を抜き世界最大の経済大国になるという野望を抱いているが、これが実現できなければ、強力な指導者として君臨してきた同主席への支持も弱まりかねないと懸念を抱いているだろう。

 WSJは、これを解決するために、習主席が国内ではより抑圧的な、海外ではより積極的な行動を取るだろうと分析した。

 中国では、16~24歳までの若者の失業率は21.3%と過去最悪を更新し、さらに不動産危機も現実的なものになりかねない。米外交シンクタンクの外交問題評議会は、中国が長期的な景気鈍化局面に入り込む可能性が高まる中で、共産党統治に対する支持を結集するため、習主席は台湾問題に焦点を合わせると予想した。

 バイデン大統領も10日、中国経済の失速や高い失業率などに言及し、「悪い人々が問題を抱えると悪いことをする」として、中国の経済問題は指導者に悪いことをそそのかしかねない「時限爆弾」と評した。

 実際、台湾に対する中国の武力示威が続いている。中国軍は18日、頼清徳・台湾副総統が南米訪問に合わせて米国を訪問したことに対抗し、台湾周辺で軍事演習とパトロールを始めたと発表した。

 また、中国は日米韓首脳会談の報復として台湾への報復を行ったのではないかとの見方も出ている。中国は「台湾より輸入したマンゴーから有害物質が検出された」とし、台湾産マンゴーの輸入中断を決定した。

 台湾問題は一段と緊迫しており、韓国も無視できない情勢となっている。

台湾有事の際には
日米と共同対処の可能性

 韓国政府は台湾問題に関し、日米とは一線を画し、慎重な立場を取り続けてきた。現在でも、国防部は、「韓国は台湾有事に参戦する義務はない」との立場を維持している。在韓米軍もその主要任務は北朝鮮に対する防衛体制の維持など、地理的に朝鮮半島に限定しているため、台湾海峡で戦闘行うことは想定したくないとの立場だろう。

 その一方で、台湾有事が南シナ海の領有権争い、さらには北朝鮮による韓国への大規模挑発などを招きかねないことから、朝鮮半島が台湾有事に巻き込まれる可能性も指摘されている。

 この点に関しても、韓国の立場は微妙な変化を見せている。日米韓首脳会議では「一つの国が脅威にさらされた際には相互に協議を行う」という点で一致した。これを受け台湾有事の際には日米韓協議が行われるとの見方が浮上している。

 韓国の多くの専門家は「韓国も非常事態への備えが必要だ」と指摘する。一部ではキャンプデービッド会談で「韓国は台湾有事に米国や日本と共同で対処することになったのでは」との見方も出ている。

 国防研究院のパク・ヨンハン研究員は「韓国の安全保障にも大きく影響すると予想されるため、積極的な対策に取り組んでおかなければならない」と指摘した。