部下に成果を求めてはいけない理由
日本では、学校教育がビジネスに直結しておらず、新入社員は入社後に先輩社員の指導を受けながら業務に必要なスキルを身につけ、社内でキャリアアップしていくことになります。いわゆる「メンバーシップ雇用」と呼ばれるものです。
「メンバーシップ雇用」を導入している会社が成果だけで人を評価するようになると、先輩社員にしてみれば、若手社員を教育することは、自分で自分のライバルを育てることを意味します。
自分の首を絞めるようなものですから、積極的にやろうとする人などまずいません。したがって、社員教育に重点を置く日本の企業には合わないわけです。
また、近年ではGoogle、マイクロソフト、アクセンチュア、GAPといったアメリカの大企業でも成果主義を排し、人物評価に切り替えています。成果だけを社員に求めるような経営では、会社を強くできないのが現実なのです。
今話したような現実を知らず、部下に対して成果を強く求めるリーダーは、残念ながら少なくありません。なぜなら、世間一般で「成果主義は、頑張った分だけ給料が上がるのだから、部下のモチベーションにつながるはずだ」という論調が未だに根強く存在しているからです。
しかし、はっきり言いますが、成果主義で部下のモチベーションがアップすることは絶対にありません。むしろ仕事に対する意欲を下げ、心と体を壊し、挙句の果てには平気な顔して悪事を働くような人間に仕立て上げるだけです。とくに、人としても、ビジネスパーソンとしても未熟な若手社員に成果を強く求めすぎてしまうと、次のような不正に走るようになります。
・詐欺まがいの手法でお客様をだまして契約を取る
・嘘の報告をする
・自腹で商品を買うなどして、売上を水増しする
・同僚の顧客情報を競合に横流しするなど、同僚を蹴落とすための行為をする
このような事態を避けるためにも、リーダーは部下に成果を強く求めてはいけません。