モチベーション管理のマネジメントはなぜダメなのか

 このように「モチベーション管理」のマネジメントは確実に失敗します。

 とくにリーダーになりたての人は、とにかく部下の士気を高めようと、やっきになる傾向があります。自然と部下の意見を聞きすぎてしまい、迎合主義に陥りがちです。結果として、部下の不平不満の助長につながり、何の解決にもなりません。

 確かにモチベーションは非常に大切です。

 かく言う私も常日頃から「高いやる気は岩をも砕く。無気力は紙すら破れない」と、社員に言い聞かせています。

 しかし先の例えの通り、錆びた鉄に金メッキを施したところで錆びているのに変わりはなく、放っておけば状況が余計に悪化してしまうのは避けられません。

 そもそもモチベーションは他人からの働きかけによって上がるものではなく、自分の力で困難を乗り越え、目標を達成した時に初めて上がるもの。したがって部下のモチベーションを管理しようなどと考える必要はないのです。

 正しいマネジメントの方法とは、「錆を取り除くこと」――つまり、「部門の抱えている問題を解決すること」です。

 したがって、会社から決められた手順で業務を進めていない部下がいれば、何百回と指導して、正しい業務の進め方を体で覚えさせるしかないわけです。

 もし部下が「自分が楽をしたいから」といったような身勝手な考えで作業手順を変えていたならば、叱責する必要があります。

 また、これまで好きなように作業を進めても誰からも注意されなかった中堅社員からは、反発されることもあるでしょう。それでも毅然とした態度で、標準化された作業手順を守らせるべきです。

 一朝一夕にはいきませんし、部下から煙たがられることもあります。

 それでも決して匙を投げないことです。

 錆びた鉄であっても、根気強く研磨すれば鋭い剣になるように、問題を抱えた部門であっても、こつこつと業務改善に取り組み続ければ、必ず強くなります。

 その頃になって、ようやく結果が出てきます。部下も仕事ができるようになり、自然とモチベーションも上がるはずです。

 ですから、部下のモチベーションを気にするのではなく、部門の問題に真正面から立ち向かうようにしましょう。