内部監査室が突然注目部署になると怪しい

 とにかく早く入れ替えたいという二代目にも、方法はある。

 読者が知る最近の似た例は、中国の国家主席である習近平氏が行った反腐敗闘争である。経営幹部の過去の活動や言動を倫理的視点で採り上げ、片っ端から難癖をつけてやり玉にあげていくのである。

 パワハラ、セクハラ、業者との癒着、無理な縁故入社、経費の使い方、ネタは何でも良い。管理体制が確立された一流企業でなければ、長年勤続してきた経営幹部は、それなりの確率で問題の火種を抱えているものだ。それをほじくり出し、大げさに問題視し、象徴的な人物なら解雇、そこまででない場合には降格など、これ見よがしに人事的な処分を行うのである。

 このとき、自分に従う者、自分にとって役に立つ者は見逃しておく。一方、自分から見てけむたい者、役に立たない者だけをパージする。人事の公平性などクソくらえで、完全なるダブルスタンダードである。

 ある人物の過去の「瑕疵」をあげつらうには、情報収集が必要だが、この情報収集活動を主として行うセクションは会社でいえば、監査部や内部監査室と呼ばれる部署である。“賢い”二代目は、このセクションを身内で固める。その瞬間から、閑職として打ち捨てられていた部署にいきなり光が当たる。それを将棋の駒に例えて業界では「成り金」と言ったりする。その意味では、突然の監査部の活発化は、これから動乱が起こる予兆かもしれない。

 一方、自分がターゲットになっていることを知った古参幹部は、場合によってはもう先はないと思って、自ら退職する道を選ぶ。人によっては、二代目に盲目的に従うことを選ぶ。軍門に下ると言って良いかもしれない。

 多くの場合、先代(父親)に対して、こうした二代目の悪行の状況が伝えられ、先代によって二代目がペナルティーを与えられることになるのだが、先代が完全に退いて、事業にまったく関心を失ってしまっていると、そういうわけにもいかない。

 だから、用意周到な二代目は、先代に仕事を忘れて楽しく遊んでもらう場所を設ける。財界活動、メディアへの露出、本の出版、芸術パトロン活動などである。