応用技! 収益を生む財産を先に贈与する

 例えば、これから相続税対策を検討している人が、アパートや株式、投資信託といった財産を持っていたとします。これらの財産は、アパートであれば家賃、株式であれば配当金、投資信託であれば分配金といった収益を生んでくれます。

 こういった性質の財産は、相続時精算課税制度を使って早めに贈与をしてしまうのです。そうすることによって、贈与した財産そのものは相続財産に足し戻されますが、贈与後に発生した家賃や配当金等は、贈与を受けた人の財産として帰属します。

 つまり、贈与をしなければ、その人の財産は時の経過と共に増えていき、将来発生する相続税の負担も増え続けるはずだったところ、相続時精算課税制度を使えば、財産および将来発生する相続税の増加を抑制することができるのです(株式等の贈与方法の詳細は各証券会社にご確認ください)。

 また現在、不動産所得が多い人であれば、所得の少ない子や孫に賃貸不動産を贈与することで、毎年の所得税も大幅に緩和できる可能性があります。

 ただし、家族全体で見れば税金の負担が緩和される場合でも、個々でみると社会保険料の負担が増加したり、扶養から外れるといった副作用が生じることがあるので、実行前は必ず税理士にシミュレーションをしてもらうようにしてください。

 また、逆に、元から高所得の人に賃貸不動産を贈与すると、所得税がさらに高額になってしまうので、その点も注意したいところです。

(本原稿は橘慶太著『ぶっちゃけ相続【増補改訂版】』から一部抜粋したものです)