iPodとiTunes Music Storeの登場で
「所有」への熱意が変化
2000年代に入ると、個人にPCや携帯電話が普及し、それを新たなプレイヤーとして楽曲をデータで販売する「音楽配信サービス」が登場した。日本でも音楽レーベル各社やアーティストが参入するようになったが「どの程度まで楽曲配信を許諾・開放するか」の度合いについては、いまだに権利所有者ごとにバラつきがある(当時は違法なダウンロードやファイル共有ソフトが横行しており、配信コンテンツを保護する意識や仕組みが未熟であったことも影響している)。
そこへきて、2005年には携帯オーディオプレーヤー「iPod」と「iTunes Music Store」が日本に登場する。「ソフトを持ち歩かない音楽体験」を印象づけたiPodのCMは衝撃的だった。
2000年代終盤には、CDは音楽以外の特典を付ける販売戦略で、おもにアイドルファンに支えられるようになる。その結果、握手券を封入した作品がチャート上位を占めるのが常となった。ほかにもデザイン違いで複数の限定盤を出したり、限定盤ごとに異なる特典を付けたりするなどで、CDは1人1枚ではなく、熱量の高い1人が複数枚を購入するアイテムに変容。こうした仕組みを「AKB商法」や「ジャニーズ商法」と呼ぶ人もいた。
ちなみにこの時期は、実体を持たない歌い手が歌唱する「ボカロ曲」が市民権を得る一方、リアルでは音楽フェスが隆盛。音楽体験が「フィジカル(身体的・物理的)」と「デジタル」とで分離するようになる。音楽以外にもシェアサービスが次々登場し「所有」への優先度は下がり始めた。
音楽ジャンルも細分化して、「かつてのように世代を超える大ヒットは、今後はもう出ない」という空気感が支配していたように思われる。