サブスク時代の到来と
ビルボード・ジャパンの台頭

 2007年、阪急阪神東宝グループの「阪神コンテンツリンク」が、日本で音楽チャート「ビルボード・ジャパン」の提供を開始した。同社はアメリカのビルボード社と独占ライセンス契約を結んで音楽情報サービスを展開するほか、ライブハウス「Billboard Live」の運営、阪神タイガース関連コンテンツのプロデュースなどの事業を手掛けている。

 YouTubeの日本語版が公開されたのも同じ2007年。2010年代に入ってからはYouTubeが国境を越えたヒット曲を生むプラットフォームになった。2015〜16年頃には、国内でApple Music、LINE MUSIC、AWA、Google Play Music、Spotifyなど、主要な音楽サブスクリプションサービスが次々開始。

 このような時代を背景に、配信曲の動向を可視化するビルボード・ジャパンのランキングが次第に注目を集めるようになった。

 オリコンとビルボードの違いは、2023年上半期総合チャート上位5位にランクインした作品をざっと比較してみるだけでも、はっきり理解できるだろう。

■「オリコン」上半期ランキング2023 シングルランキング

1位 King & Prince「Life goes on/We are youn」
2位 Snow Man「タペストリー/ W」
3位 乃木坂46「人は夢を二度見る」
4位 なにわ男子「Special Kiss」
5位 日向坂46「One choice」

■2023年上半期「Billboard JAPAN」総合ソング・チャート

1位 Official髭男dism「Subtitle」
2位 米津玄師「KICK BACK」
3位 YOASOBI「アイドル」
4位 Vaundy「怪獣の花唄」
5位 10-FEET「第ゼロ感」

 同じ国で、同じ期間を対象に集計したヒット曲ランキングであるにもかかわらず、まるで違う世界を見ているような結果だ。

 オリコンはこの数年間、アイドルグループの「ファンダム」によって実質“ハックされる”状況が続いているといっていいだろう。ファンダムというのは熱狂的ファン集団のこと。「推しがチャートで1位を取ること」もファンによる推し活の目的の1つだ。