エンタメユーザーは
公正性をより重視するように

 ビルボード・ジャパンがいかにしてオリコンチャートに取って代わり、現在の信頼を得るのに至ったのか、音楽サービスの変遷などの側面から振り返ってみた。

 現代のエンタメユーザーはかつての時代よりも公正性に敏感で、歴史ある賞の選定基準に違和感を表明したり、特定の団体や企業に忖度するメディアへ不信感を持ったりする人が多い。そして毎年年末が近づくたびに、そうした問題への関心が高まる傾向がある。

 そんな中、近年のNHKの「紅白歌合戦」も興味深い動きを見せている。紅白といえば、幅広い世代からの満足を求められているコンテンツの代表格だ。ビルボード・ジャパンに通じる姿勢で配信市場にもしっかり向き合って、若い世代のアーティストを選定し始めているように思われる。音楽チャートが「CD売上→サブスク再生回数」と変化したように、テレビ番組も「既存の世帯視聴率→SNSでの反応」へと評価指標がシフトしていく可能性が高い。

 コンテンツやサービスといった商品は、流通チャネルやメディアなど、ユーザーの接触行動が移り変わると、その評価指標もまた見直していく必要がある。変化の激しい時代に「偏りなくトレンドをとらえるチャレンジを止めない」ビルボード・ジャパンの成功は、デジタル・マーケティングの好事例に思える。