政府による投資資金の流出食い止め策の強化

 もう一点、重要なことは中国でデフレ圧力が強いことだ。多くの家計や企業は、債務の圧縮を急ぎ、支出や投資を減らしている。不動産市況の悪化が深刻化し、雇用や所得にも響いている。

 8月15日、習政権は測定方法の改善を理由に、若年層の調査失業率の公表を一時停止すると発表した。その直後から、外国為替市場で人民元の下落が勢いを増すように。中国経済がどんな状況にあるか把握することが困難になるとの懸念は高まり、人民元を売却する投資家が増えた。

 他方、14日にカントリー・ガーデンが、中国国内で取引される債券の取引停止を発表した。続く17日、エバーグランデが米連邦破産法15条の適用を申請した。われ先にとエバーグランデの資産を押さえようとする債権者が急増しているそうだ。無秩序なデフォルトを避けるためにエバーグランデは資産保全を強化したと考えられる。

 15日、ドル建てのエバーグランデ社債(24年1月が満期)の利回りは4000%を超えた。「売るから下がる、下がるから売る」という負の連鎖は止まらず、中国は株・債券・通貨のトリプル安に直面した。

 また、有価証券に加え直接投資の面でも、中国を脱出する企業は増えた。生産年齢人口の減少による労働コスト上昇、半導体など先端分野での米中対立の先鋭化は大きい。習政権が台湾への圧力強化を示唆していることも不安の種だ。

 今後、投資資金の流出が続くと、中国の資金振りはひっ迫し、バランスシート調整(資産価格が大幅に下落した場合、その後の経済主体の支出活動が抑圧されるプロセスのこと)は深刻化するだろう。

 そうした展開を阻止するため、共産党政権は国有銀行に為替介入の強化を命じた。一部の機関投資家に、株式を売却しないよう要請したとも報じられた。取引時間の延長なども実施し、習政権は資金流出の増加を食い止めようとしている。