逆回転し始めた中国の高成長の仕組み

 8月は中国経済の悪化リスクが一段と高まり、投資資金の流出が加速した。投資に依存した中国経済の成長メカニズムは限界を迎え、既に逆回転し始めている。

 1978年の「改革開放」以降、中国は重厚長大分野で国有・国営企業の経営体制を強化してきた。経済特区を設けて海外企業の直接投資を呼び込み、製造技術の移転も促進した。安価で豊富な労働力を背景に、「世界の工場」としての地位を固め、輸出競争力を上げた。それに加えて、国内の不動産投資を活発化させることで、90年代以降は10%超の高い経済成長率を実現した。

 リーマンショック後、世界全体で貿易取引は減少すると、共産党政権は投資による経済成長を重視した。4兆元(当時の為替レートで換算すると約56兆円)の経済対策を実施し、不動産などへの投資を増加。農村地域への自動車や家電の普及も加速した。

 地方政府は、土地の利用権をカントリー・ガーデンなどのデベロッパーに売却し、財政収入を確保した。その資金を使って道路建設などインフラ投資を実施。電気自動車(EV)普及など補助金政策も強化した。鉄鋼など基礎資材の生産能力強化のために固定資産投資(主に企業の設備投資)も増えた。

 経済成長の恩恵を享受するために、海外から中国に流入する資金は有価証券投資・直接投資の両面で増えた。不動産投資は膨張し、「土地の需要やマンション価格は上昇し続ける」という神話のような成長期待も盛り上がった。

 ところが、そうしたメカニズムが永久に続くことはあり得ない。既にその仕組みは逆回転し始めている。20年8月の不動産融資規制(3つのレッドライン実施)によって、不動産デベロッパーの資金繰りは急速に悪化している。建設活動は停滞し、未完成のまま放置される物件も増えた。住宅価格は下落し、中国経済を支えた不動産市況の悪化が鮮明だ。