世界経済の足を引っ張る中国経済の低迷
いわゆるバブル経済が発生すると、急成長する企業や投資家が現れる。カントリー・ガーデンやエバーグランデがまさにそうだった。しかし、そうした状況が永久に続くわけではない。いずれ不動産価格は天井を付けて下落する。投資家や企業はレバレッジを解消し、借り入れた資金の返済を急ぐようになる。
エバーグランデなどのデフォルト懸念は、中国の不動産市況が最悪期を迎えつつあることを示唆している。地方政府傘下の投資会社である、地方融資平台(LGFV)の債務問題も深刻だ。
今後の展開で重要なポイントは、習政権が不良債権処理などバブルの後始末を進め、投資資金の流出を食い止めて資産価格に底打ち感が出るか否か。現在の習政権の経済政策を見ると、公的資金を注入し不良債権処理を加速する考えは伝わってこない。
ということは、中国の不動産市況が底を打つには、もう少し時間がかかるだろう。となると、不動産、地方政府、国営・国有企業の債務問題は深刻化し、景気はさらに不透明になる。地方財政の悪化によって、医療・年金などの社会保障体制の不安定化に対する懸念も増す。国民は不安から支出を減らし、貯蓄を優先する家計が増えるだろう。つまり、デフレ圧力がいっそう強くなる。
中国の本格的な景気回復には時間がかかりそうだ。こうなると、もちろん今すぐにではないにせよ、世界全体で資源需要が低下し、企業や投資家のリスク許容度も低下する可能性は否めない。また、欧米では物価が高止まりしていて、主要国が金融引き締めを続ける公算は大きい。金利上昇により世界的に景況感は弱含むだろう。
中国は、そうした世界経済の下方リスクを高める。不動産企業や地方政府の債務問題の深刻化は、展開次第で世界経済と金融市場の不安定感を大きく左右するはずだ。