『10万人以上を指導した中学受験塾 SAPIXだから知っている頭のいい子が家でやっていること』(ディスカヴァー・トゥエンティーワン)の著者で教育ライターの佐藤智氏によると、子どもを学びに近づけるためには、まず「楽しい」と思わせることが大事だという。

「もっとも手軽にできる家庭内での経験は、『親子での会話』です。たとえばクイズを出し合うということは教科を問わずできる遊びですし、考える力も身につきます。算数でいえば『12になる掛け算は?』などと親子で問題を出し合い、どんどんクイズの難易度を上げていく。次第に大人も回答することが難しくなるので、脳トレの感覚で、親子で楽しめると思います。会話は子どもの表現力を増やすためにも効果的な、家庭できる『学び』なんです」

 こうした親子の触れ合いを通して、子どもは学ぶことの面白さを会得していくのだ

「SAPIXへの取材では、学び続けられる頭のいい子には、三つの力が備わっていることが見えてきました。一つ目は知りたい、分かりたいという好奇心。二つ目は、言われたことに対して『そうなのかな?』と批判的に考えられる力、三つ目は自らを表現する力です。これらの育んでいくことで、新たな学びへと関心を持つようになり、自発的に学び続けられる子へと成長していきます」

 ただ頭ごなしに「勉強しなさい!」と指示するだけでは、子どもは学ぶことが楽しいとは感じにくい。子どもがタブレットやスマホの使用に時間を使いすぎているのではないかという懸念があったとしても、一方的な伝え方をするのではなく親子での「対話」が重要だ。

「私個人の考えとしては、タブレットやスマホの使用も、親の一方的な押し付けではなく、子どもと一緒にルールを考えることが大事だと思います。今は小学校でもタブレットを使って授業を行います。娯楽にも学習にも使えるのがこれらのデジタル機器。タブレットやスマホはあくまでツールなのです。『やめなさい』と禁ずるのではなく、上手に活用するためにはどうしたらいいか対話をしてみてください」

 それよりも親のスマホやタブレット使用が子どもの勉強への意欲を削いでいないかが気掛かりだという。

「子どもに『集中しなさい』と伝えるときは、果たして集中できるような環境にあるかを確認してみてください。子どもには『勉強に集中しなさい』と言っているのに、保護者がテレビを見ているようなことはありませんか?あるいは保護者がスマホでゲームをしていたら、子どもはそちらが気になります。可能であれば、お父さんお母さん自身も何かに集中している姿を子どもに見せましょう。子どもが勉強している横で、資格の勉強をしたり読書をしたりできるといいですね」