「会社に対する不満が蔓延している」、「なぜか人が辞めていく」、「社員にモチベーションがない」など具体的な問題があるわけではないけれど、なぜだかモヤモヤする職場になっていないだろうか。そんな悩みにおすすめなのが、近年話題の「組織開発」というアプローチだ。組織開発では、「対話」を通してメンバー間の「関係の質」を向上させていく。そんな組織開発のはじめ方を成功事例とともに紹介したのが、『いちばんやさしい「組織開発」のはじめ方』(中村和彦監修・解説、早瀬信、高橋妙子、瀬山暁夫著)だ。本記事では、発売前から話題沸騰となっている『いちばんやさしい「組織開発」のはじめ方』の出版を記念して、内容の一部を抜粋し再編集してお届けする。

メンバーからの不満、相次ぐ退職者、業績の悪化……「負のループが止まらない職場」のとある共通点とは?Photo: Adobe Stock

悪循環に陥った職場では、「関係の質」が低下している

 誰かが感じたモヤモヤを話し合いのテーブルに載せ、みんなでその原因を考え、解決のための手立てを考える。

 まさに「私ごと」を「私たちごと」にする活動が組織開発です。

 では、組織開発はどこから出発すれば良いのでしょうか。

 組織開発の考えでは、まずメンバー間の「関係の質」を高めることが有効です。

 MIT(マサチューセッツ工科大学)組織学習センターの共同創設者であるダニエル・キム氏が提唱した「成功の循環モデル」という考え方を紹介します。

「関係の質」が高くなると、自然と考え方も前向きになり、目的意識が高まって「思考の質」が上がる。

 それがメンバーの積極性や主体性といった「行動の質」を高め、その結果として成果が生まれて「結果の質」につながる。

 すると、ますます関係の質が高くなる、といった循環を指しています。

 不満が生まれ、退職者が出るという職場では、「関係の質」は低いのではないかと思われます。

 リモート化によって対面で話す機会が減ったことも影響しているかもしれません。

 ここで関係の質が高まれば、その先にある業績回復のためにどうするかについても率直に話し合うことができます。

 相互にフィードバックすることでより有効なアイデアが生まれ、結果が好転する可能性も出てくる。さらに、能力の高いメンバーの経験やスキルが共有され、若手の成長も期待できます。

では、「関係の質」はどのようにして高めるのか?

 何より必要なのは、話し合いの機会を意識的に設けること。

 それによって、お互いが「どういう人であるのか」をわかり合うことです。それが、信頼関係を築く第一歩となります。

 話し合いによってモヤモヤの本質を明らかにする。さらに、みんなで意見を出し合って解決法を考える。

 これが、組織開発の基本なのです。

 モヤモヤを明らかにするための話し合いは、そのまま関係の質を高めるプロセスでもあります。

(本原稿は、『いちばんやさしい「組織開発」のはじめ方』の内容を抜粋・編集したものです)