対話するほど分断が深まる場所

 Z世代のアクティビストたちが、Twitterを離れてInstagramに移行し始めたのも2022年頃だ。

 あるZ世代の女性たちは言う。

「Twitterは、知らないアカウントとの対話や議論で、新しい観点を得られる場所では、もはやなくなってしまった。話せば話すほど、対話すればするほど対立や分断が深まる。心理的安全性とは程遠い場所。人権を無視すればするほどバズる世界」

「Twitterは距離感のバグったおじさんだらけすぎる。Twitterはヤバい人がヤバさを隠せる場所なのかも、インスタではそういう“おじさんたち”は自分の顔面のドアップをアイコンにしていたり、まずそうな食べ物を載せていたり、ヤバさが隠せてないから即ブロックできるし、コメントを削除できる機能があるからまだ安心できる」

 2022年10月、イローン・マスク氏によってTwitterは買収された。以降、ヘイトスピーチや暴力的な発言をしたアカウントの凍結を解除。トランプ前大統領のアカウントも凍結が解除された。

 2023年8月に名称は「X」となり、インフルエンサーへの収益化やブロック機能の削除が検討され、今後より一層、治安は悪化していくだろう。

 あるZ世代のアクティビストは言う。

「もはやTwitterはマジョリティーや強者、権力側が幅を利かせるSNSになった。マイノリティーの小さな声や反権力的な声は徹底的に痛めつけられるようになった。

 私たちは、もう一度小さく、顔の見える範囲で安全につながっていくしかない。でもそれが結局、正解なのかもしれない。ひとつの時代が終わったと思う。簡単に答えが手に入るという錯覚から私たちが解放された時、次の時代が来て、その時にはまた新しい何かまったく別のプラットフォームがあるのかもしれない」

 ひとつのSNSに依存し一喜一憂するという価値観自体が、すでに旧世代なのかもしれない。

 人権やジェンダー平等、気候変動などの社会問題に強い関心を示すと言われるZ世代たちは、もはやTwitterに期待をしていない。それは経済合理性を追い求めて作られてきた今の社会構造そのものに対して、期待していないという意識と根底で通じているように感じられた。