日本の英語学習はインプット中心でアウトプットの機会がほとんどない。小学生から大学生まで、10年以上もの時間をかけて英語を学んでも一向に話せるようにならない原因は、アウトプット不足だ。新刊『中学英語だけで面白いほど話せる!見たまま秒で言う英会話』は、「イラストを見る→見たままを英語にする」を繰り返すことで、アウトプットのトレーニングができる1冊だ。本稿では、著者の森秀夫さん(麗澤大学外国語学部教授)に「アウトプットの学習で得られる3つの効用(言語教育学者M. Swainの提唱)を教えてもらった。

英語で伸び悩んでいる人ほど、アウトプットに時間を割くべき3つの理由Photo: Adobe Stock

(1)理解力と表現力のギャップに気づける

――森先生が英語学習におけるアウトプットの重要性を強調する理由を教えてください。

森秀夫(以下、森):言語教育学者M. Swainによれば、アウトプットには、インプットでは得られない3つの効用があるとされています。

 1つ目は「自分の英語のギャップ」に気づけることです。

「自分が英語で理解できること」と「自分が英語で表現できること」との間には、ギャップがあるとわかるのです。

――それは、どういうことでしょうか?

:例えば、worthを使って、「富士山は登る価値がある」をパッと言えるでしょうか。

 It’s worth climbing Mt. Fuji.とパッと言える人は表現力があります。一方で、worthという単語を知っているのにパッと言えない人は、理解力と表現力の間にギャップがあると言えるでしょう。

 このギャップに気づくことで、その後の学習方法をインプット主体からアウトプット主体へと変えることができます。

(2)相手の反応から自分の英語を検証できる

――2つ目の効用はどんなものがありますか?

:アウトプットをするということは、聞き手がいるわけです。自分の発言に対して相手がそのまま会話を続けてくれたら、自分の英語が通じているとわかり、自信を持つことができます。

 一方、聞き返された場合には、自分の英語が相手に伝わっていない可能性があります。

 相手が“Sorry?”や“What do you mean?”などと言ってきた場合には、「この言い方は相手に伝わっていないから、別の言い方をしなければ」と気づくことができます。

 このように、相手の反応があることで、表現力が磨かれ、自信を深めていくことができるわけです。

 最初は伝わらないことが多いかもしれません。しかし、試行錯誤しながら英語を話そうとする経験が、英会話力を高める1番の練習になるので、失敗を恐れずアウトプットを続けることが大切です。

(3)「英語の言語形式」についての意識が高まる

――3つ目の効用について教えてください。

:アウトプットを習慣にしていると、自分が使った「英語の言語形式」への意識も自然と高まります。

 例えば、英語でアウトプットをすると、

「“look”よりも“watch”を使うべきだったかな」
「過去形で話した方がよかったかも」

 といったように、自分が使った英語について振り返ることができます。つまり、正しい文法を使っているのかを意識的に考えるようになります。そうすると、今度はネイティブの英語を見聞きした時に、

「こんな時にlookを使うのか」
「この表現は過去形で使われることが多いな」

 などと、言語形式に着目するようになり、理解する能力もさらに伸びるようになります。

 自分で使うことを想定して英語をインプットするようになれば、単に暗記のためだけにインプットしている時よりも、吸収力が格段にアップします。