あれが、まさに「老年的超越」の典型的な例といってよいでしょう。老年的超越の大きな特徴は、ものの見方が楽観的になると同時に、周囲への寛容性が高まることにあります。年をとると丸くなるというのが、それに当たるのでしょう。性格が穏やかになって些細(ささい)なことが気にならなくなり、幸福感が増していくのだと考えられます。きんさんは107歳、ぎんさんは108歳の天寿を全(まっと)うしました。

 容易に想像がつくかもしれませんが、性格のいい人が幸せであることは、心理学の研究結果を見ても明らかです。意地悪な人は猜疑心(さいぎしん)が強く、不幸な傾向が高いという結果が出ています。もちろん、意地悪じいさん、意地悪ばあさんのような人が長生きするケースもあるかもしれませんが、それは少数派でしょう。

 言い換えれば、性格にひどく難がある人は早めに亡くなる可能性が高いため、80歳、90 歳、100歳と年をとっていくにしたがって、きんさんぎんさんのように、いつもニコニコしている人の比率が増えていくのだとも考えられます。

 いずれにしても、性格がいい人は幸せであり、幸せな人は長生きする、つまり性格がいい人は長生きするといってよいでしょう。

 それを裏付けるものとして、「誠実性の低さ、外向性の高さ、神経症傾向の高さが死亡率を高める」「楽観的な気質が長生きと関連する」といった研究結果が報告されています。