幸せは「寿命」とも関係している

 もちろん、「高齢者」でひとくくりにはできません。年をとるとともに幸福感が増してくる人もいれば、それほどでもない人もいるでしょう。

 しかし、どうせなら幸福感を味わえる人になりたいものです。というのも、それは単に「幸せだなあ」といい気分になれるだけでなく、もう1つの大きなメリットがあるからです。

 それは、幸福感がその人の寿命とも関係しているということです。

 例えば、2011年に『サイエンス』誌に掲載された“Happy People Live Longer”(幸せな人は長生きする)という有名な論文があります。そのなかで紹介されているアメリカの修道女678人を対象とした研究「ナン・スタディ」によると、ほぼ同じ環境で、同じような生活を繰り返していた修道女180人を対象に比較したところ、入所したときに幸せを感じていた人の平均寿命は94歳だったのに対して、そうでない人の平均寿命は87歳だったというのです。幸福感を持って生きた修道女は、平均して7年長く生きることができたことになります。

 こうしたデータは枚挙にいとまがありません。東京都板橋区の高齢者2447名を7年間追跡した研究では、主観的幸福感の低さが死亡の確率を8%高めるという結果が出ています。

 そのほかにも、先進国に住む多くの人で比較したところ、幸せを感じている人はそうでない人に比べて7.5~10年寿命が長いというデータもあります。幸せな人が長生きするというのは、民族、文化の違いにかかわらず当てはまる事実と見てよいでしょう。

 その原因についても研究データがあり、幸福感が低い人は循環器系の病気になりやすいとされています。自身が不幸だと感じている人は、いわゆる神経質な性格の傾向があり、少しのことでクヨクヨしたり腹を立てたりしがちです。それがストレスとなって、病気や事故を引き起こしやすくなるのではないかと考えられます。

長生きする人の性格には、こんな共通点がある

 1990年代にメディアで大きな人気を呼んだ高齢の姉妹がいました。100歳を迎えた双子姉妹の「きんさんぎんさん」(成田きんさんと蟹江(かにえ)ぎんさん)です。2人の屈託のない笑顔や、物おじしない態度を見て、「あれこそが理想の老後だ」と感じた人も多いことでしょう。

 とはいえ、若い頃には苦労もしたはずですし、戦争や災害も体験しています。子や孫を失うという悲しいこともあったそうです。しかし、100歳を超えたお2人はすべてを超越したような様子で、にこやかな笑顔を振りまいていました。