入行3年目の社員が
退職を決めた理由

 ところで最近の若手社員の中には、処遇は改善された方がうれしいが、昇進・昇格を必ずしも望んでいない者が少なからずいるようだ。給料は高いに越したことがないが、責任は取りたくない。全く都合のいい話だが、私のような老いぼれた中間管理職を見ていれば、そう思われても仕方がないのかもしれない。ましてや、支店長を目指すなど考えるわけもないだろう。

 すでに、仕事に対する考え方がこの30年で大きく変わっている。銀行で仕事をするなら、いつかは支店長になりたいと考えていた時代ではなくなっている。それにしがみついているのは、バブル入行組か崩壊後間もなく入行した世代であり、若い世代の考え方は極めてドライだ。これも、政府が目指す働き方改革の波なのか。

 先月、入行3年目の法人営業担当者がデスクにいる私へ声をかけてきた。

「課長、今ちょっといいですか? 私、今月退職することになりました」

「えっ? 随分突然だな。それでこれからどうするんだ?転職か?」

「はい、外資系のコンサル会社に転職します」

「コンサルかあ。うちの銀行でもできたんじゃないか?そういう部署、うちにもあるよな?」

「キャリア公募で申し込んでも、その部署に行ける保証はないですもん。それに、1年後になるのか、もっと後か…そうなると待ちきれませんね。そこに行けたとしても、やりたいことをやらせてもらえるとは限りませんし。今までやらされてきたことを考えると、とてもじゃないけれど希望が通ると思えません。どうせまともに評価されてませんしね」

「評価って言うけど、キミはまだ2~3年しか働いてないじゃないか。仕えた支店長だって2人だろ? 将来、キミを買ってくれる支店長が現れるかもしれないぜ?」

「今、評価されなきゃ意味がないんですよ。だから、評価してもらえる会社に転職します」

「その会社で評価されなかったら、どうするのさ」

「そういうことはあまり考えないですね。この銀行に入る時もそうでしたし。また転職したらいいじゃないですか? 少なくとも、今の支店長みたいな人がいない会社に行きたいですね。そろそろ行きます。課長もお元気で。お世話になりました」

「おう、頑張れよ。近くに来たら寄ってけよ」

「あはは、たぶん来ませんよ。それじゃ」

 それが彼と会った最後だった。

 長くても2年で支店長が異動する環境だ。それこそ最大の魅力であり、自分次第で敗者復活のチャンスはいくらでもあるはずなのだが、退職を選択したのはよほど我慢がならなかったのだろう。

 支店長が喜ぶ成果を上げれば、いいことがあると信じていた昭和時代。一方、部下が支店長を見下し、支店長も部下の将来など露とも思わない令和時代。全てが全て、こんな支店長や若手ばかりではないが、30年の年月をこの会社一筋でやってきた自分としては、このギャップに強い違和感を覚える。昔の常識はもう通用しない世の中になっているんだと痛感している。

 ただし、この若手が支店長に失望し退職していったように、やはり支店長の存在というのは大きい。それだけはいつの時代になっても、いい意味でも悪い意味でも変わらないのだ。