すべてのつながりを切らなくていい

 ソーシャルキャピタル(社会関係資本)で議論されるテーマでもあるのですが、たまに挨拶するような弱いつながりを持っておくと、いざというときにスムーズに助け合うことができます。

 それは、東日本大震災などの災害発生時に実証されています。病人がいる、家が壊れたなどの困ったことが起きたときに、弱いつながりに頼ることで、「医者ならあそこにいる」「大工さんを知っている」などの情報をすぐに得ることができて、トラブルを解決しやすいのです。

 ところが、つながりをすべて切ってしまっていると、そうはいきません。まったく面識がない人に信用してもらうために、自己紹介からはじめなくてはならないからです。

 そう考えると、年に1回、あるいは2、3年に1回でも会って食事をするような学生時代の友だちも貴重といえます。学生時代はそれほど親しくなかったのに、ちょっとした頼み事や相談をしたことがきっかけで深くつながることはよくあるものです。昔を知っている友人だからこそ、会うことがまれであっても、いざというときに助け舟を出してくれるかもしれません。

 しょっちゅう会っている人も大切ですが、弱いつながりも大切にしたいものです。よほど嫌いな人は別として、高齢になったからといってむやみにつながりを切らなくてもいいと思います。

近所づきあいと幸福度の関係

 都会に住む人にとって距離感が難しいのは近所づきあいかもしれません。「面倒くさいから近所づきあいはしない」という人も多いのですが、まったくしないのはおすすめではありません。「遠くの親戚より近くの他人」という格言があるように、家族や友人が少なくても近所づきあいが密な人は、幸福度が高いというデータがあります。

 私(前野)は、ご近所づきあいによる幸福度の比較について、神奈川県寒川(さむかわ)町で調査を行いました。調査では、近所づきあいについて、「日常的につきあいがある」「挨拶程度のつきあいがある」「とくにない」から選んでいただき、それぞれの幸福度を調べてみました。