眠りで記憶が“美化”される

トラウマ(心の傷)の研究で有名なべセル・A・ヴァン・デア・コルク博士から直接聞いた話なのですが、博士の祖父はオランダの軍人で、戦時中に日本軍の捕虜になっていた時期があったそうです。

博士の祖父は終戦後、「日本人はとんでもない奴らだ!」と言っていたそうですが、何度も「眠って、起きて」をくり返すうちに、「日本人は戦友だ」と記憶が美化されていったそうです。

ぐっすり眠ることで記憶が整理され、「嫌だ!」と思っていたものが、美化されて「いいもの」に思えてくる。

こんなふうに、「やりたくない」と思っていることでも、何度も眠っていると記憶が整理されて、「もしかしてそんなに嫌なことじゃないのかも」に変わっていきます。

「やりたくないことをやっている」と思っているのは、もしかしたら眠りによって記憶が適切に整理されていないから、「やりたくない」という気持ちのまま、残ってしまっているのかもしれません。

深い睡眠とともに、本当にやりたいことが見つかる

眠っている間に無意識が適切に記憶を整理してくれると、記憶は不思議と美化されます。すると「やりたくないこと」と思っていたものが電気ショックではなくなり、睡眠パターンが整ってきます。

「あれ? 私のやりたいことってこれかも!」とやりたいことがどんどん浮かんでくるようになります。
学習性無力感に陥っていた記憶も美化されるから、自由にやりたいことに取り組めます。

「これがやりたいかも」と思ったら、気軽に挑戦できる状態です。そして挑戦しているうちに、別のやりたいことが見つかったら「こっちもやってみたい!」と躊躇なく取り組めます。

いくつも同時にやりたいことをやっているうちに、そのやりたいことの中に共通点が見つかり始めます。

そうした体験の情報が、眠るうちに適切に整理されていき、「本当のやりたいことはこれだったんだ!」というものが見つかるのです。

なかなか深い睡眠がとれていない、という方は寝る前に考えるのをストップして、「眠っている間に無意識に任せよう」と思ってみてください。それだけでも眠りの質が変わってきます。

無意識が眠りの中でしてくれる記憶の整理は本当にすごい。フットワークを軽くするだけでなく、本当にやりたいことを見つけてくれるのです。

(*本稿は『無意識さんの力でぐっすり眠れる本』より一部抜粋、再編集したものです)