でも、その色は性別に「らしくない」色であるという理由から、親は性別に合った色の服を着るように強制しました。
Iさんが「この色は嫌い。着たくない」と訴えると、「お前はおかしい」「お前のせいで、親までおかしいと思われる」「親の顔に泥を塗るな」と、母親から怒られたそうです。
さらには、小学生の頃は漫画が大好きだったIさんですが、「こんなものを読んでいたらばかになる」「人生の役に立たない」という理由で、父親に勝手に捨てられたこともあったといいます。
これらについて話し終えたあと、Iさんは「好きなものについて思い浮かぶのは、この2つくらいです。それ以降は、好きとか嫌いとか甘いことは考えずに、やるべきことをやって生きてきました。おかげでそれなりに勉強はできたし、今の会社に入ることもできましたが……」と肩を落としました。
Iさんの場合は、過去に好きなものを否定されたことの積み重ねが、好きなものやしたいことが分からない原因でした。
好きなものがあっても否定される、したいことがあっても許されない……このような辛い経験が繰り返されると、「好きなものやしたいことなんて、ないほうがいい」と無意識に思い込みます。
好きなものがなければ否定されないし、したいことがなければ傷つくこともないからです。
傷つくことから自分を守るための1つの手段として、「好き」や「したい」を感じなくなってしまうのです。
自分の人生がつまらなく感じたり、したいことや好きなことが分からなくなった時には、いつ頃からそう感じるようになったのか振り返ってみましょう。
それが最近のことならば、冒頭でお伝えしたように、体や心を休めるだけで辛い状況から抜け出せることがあります。
そのように感じるようになったのが相当前のことであれば、Iさんのように子どもの頃を振り返ることで、今抱えている悩みの原因が見つかることがあります。
原因が分かったあとは、好きなことや、したいことをすることについて、自分自身に許可を出すようにします。
子どもの頃は、好きなこともしたいことも親に否定されたかもしれませんが、これから先の人生に親の許可は必要ありません。
大人になったあなたはもう、あなたの足で生きていけます。
大丈夫ですよ。
精神科クリニックに併設のカウンセリングルームで10年以上、心理カウンセラーとして勤務した後、独立。現在は人間関係、親子問題、機能不全家族専門カウンセラーとしてメールでのカウンセリングを中心に活動。メールでのカウンセリング、対面カウンセリングともにいつも予約がいっぱいで、現在も数か月待ちの超人気カウンセラー。
著書に『あなたはもう、自分のために生きていい』(ダイヤモンド社)などがある。X(旧Twitter) @Poche77085714
※本稿は、Poche著『悪いのは、あなたじゃない』(ダイヤモンド社)から再構成したものです。