毎年9月3日は、睡眠健康推進機構と日本睡眠学会が制定した「秋の睡眠の日」だ。3月の世界睡眠デーと一対になる。
眠りは、疲労が蓄積されることで次第に増大する「睡眠欲求」と、体内の「覚醒システム」との綱引きのなかで生じる。
覚醒は交感神経系の活性化や深部体温(脳の温度)の上昇によって保たれており、就寝時刻の1~2時間前に分泌される睡眠ホルモンの「メラトニン」の作用で、心身がリラックスモードに切り替わると、眠りが訪れる。
その際、昼間の活動で熱のこもった脳を冷却するために、体表から熱を放散する必要がある。寝る直前ではなく、就寝の90~120分前に入浴して体温を上げ、その反動で熱を放散させるとよいとされるのはこのためだ。
寝る直前の入浴になる場合は、身体を温め過ぎないシャワー浴がお勧め。さっぱり、リラックスしてから寝室へ向かおう。
布団に入ったら、枕元の灯りはできるだけ絞ること。強い光は天然の睡眠導入剤ともいえるメラトニンの分泌を止めてしまう。
9月とはいえ、まだ残暑がきつい夜は、躊躇わずにエアコンを利用しよう。一般に夏~秋にかけての快適な寝室の温度は28~26℃、湿度は50%前後といわれている。寝具との兼ね合いもあるので快適な温度と湿度を探してみるといい。
余裕がある方は、この際、寝具を見直してみよう。
枕は好みもあるが、首の角度が仰向けで寝たときに敷布団から10~15度の範囲で保たれる高さが理想的。肩口までしっかり枕を引き寄せて、後頭部から首まで枕に支えてもらおう。特にいびきがひどく、睡眠時無呼吸症候群が疑われる人は、頭と敷布団の間に余計な隙間がない姿勢が望ましい。
敷布団は寝返りを打ちやすい適度な硬さがあり、掛け布団も身動きを妨げない軽くて放湿性のある素材がお薦め。寝返りには、血液循環の滞りを防ぎ、寝床のなかに熱や湿度がこもらないように調節する役割があるからだ。
それなりの環境を整えて酷暑の間に積もりに積もった「睡眠負債」を返済していこう。
(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)