日本のテレビマンは
組織に従順な「社畜」

 そして、これに拍車をかけたのは、海外のテレビ制作者と異なる「社畜根性」だ。デーブさんも指摘したように、日本のテレビ制作の現場は個人の能力で勝負する「プロのテレビマン」より、周囲と仲良くやって定年退職まで平穏無事に過ごしたいテレビ局社員を筆頭に、「社畜のテレビマン」がはるかに多くいる。

 組織に忠誠を誓う人が多いということは、トラブルや不正を見つけても組織内の立場や、平和な日常を守るという「保身」から隠ぺい・黙認に流れがちな人も多いということだ。

 わかりやすいのが、神戸製鋼だ。同社の品質管理の現場ではデータ改ざんという不正が40年以上前から続いていたが、その間に誰かが声をあげるということはなかった。改ざんをした方が作業効率が上がって利益につながっていたし、不正をした従業員が上司となるようなケースも増えて、組織人としては「みんな黙った方が得」という状況になった。

 テレビ局もこれと同じ組織内力学が働いていた可能性がある。ジャニー氏の性加害に沈黙した人間がどんどん出世すれば、組織に従順な「社畜」としては沈黙する方が得だ。9月11日には歌手・美川憲一さんも「触れてはいけない空気というか、マスコミの皆さんも昔からみんなそうだった」と発言している。

 ただ、この説明だけでは納得のいかない人も多いだろう。バラエティや歌番組やドラマなど制作しているところは「社畜たちの沈黙」がまん延して、ジャニー氏の性加害問題がタブーとなっていたとしても、テレビには「報道機関」という機能もあるからだ。

 日頃から社会正義を標榜して、犯罪や不正を叩くテレビ報道マンたちはなぜ、被害者たちの必死の告発や文春報道に「沈黙」をし続けたのか

 これはテレビ業界が浸かりきっているもう一つの「ムラ社会」が原因だと筆者は考えている。それは「記者クラブ」だ。