サラリーマンジャーナリストの「保身」
テレビも解体的出直しを
そこに加えて、サラリーマンジャーナリストならではの「保身」もあっただろう。警察や官僚という「信頼できる得意先」が扱わない「危ないネタ」に触って、もしジャニーズ事務所からクレームがくるなど、ややこしいことなったらテレビ局社員、新聞社社員という組織人としてのキャリアにも傷がつく。左遷されたりすれば、人生設計が大きく狂う。触らぬ神になんとやらだ。
このような日本のテレビ局の構造的な問題を考えれば、「マスメディアの沈黙」は驚くような話ではない。そもそも、「テレビ局・新聞社」と「記者クラブ」という二つの閉鎖的なムラ社会の中でがんじがらめになっているマスコミ記者に、「なぜこの問題を報道しなかったのだ」「忖度したのか」などと糾弾する方が気の毒だ。
「記者クラブ」にどっぷり浸かっているので、これまでそんなリスキーな報道をした経験もなければ、やり方も教わっていない。政治や企業のスキャンダルのほとんどが、「文春」「新潮」という週刊誌やネット・SNSから発信されていることがすべてを物語っている。
実は週刊誌や雑誌が報じていても、「記者クラブ」がスルーし続けていた問題など、まだまだ山ほどある。ジャニーズの性加害は氷山の一角なのだ。
マスコミは、「ジャニーズ事務所は解体的出直しをせよ」と偉そうなことを言っているが、「記者クラブ」という異常な癒着システムを続ける新聞やテレビの方こそ、そろそろ解体的出直しが必要なのではないか。
(ノンフィクションライター 窪田順生)
・3段落目:10月期改編説明会で「タレント自身に問題があるとは考えておりません。これまで通り番組の企画内容などを踏まえ、ご出演頂きたいと考えております」と大手企業と180度異なる独特の企業倫理を披露したのだ。
→9月7日に「タレント自身に問題があるとは考えておりません。これまで通り番組の企画内容などを踏まえ、ご出演頂きたいと考えております」と大手企業と180度異なる独特の企業倫理を発表して以降、13日の10月期改編説明会でもこの方針を翻していない。
(2023年9月14日17:29 ダイヤモンド編集部)