天候や国民性や周りの国々により、その国の統治体系も影響を受ける。地理的な位置で、獲れる食物も利用できる資源も左右される。そこから起こってくる産業も変わってくる。

 地球上のどこにあるのか? 緯度はどのへんなのか? 島なのか? 半島なのか? 大陸の真ん中にあるのか? これによって、国の運命は大きく変わる。今まで述べた要素によって歴史が作られてくる。歴史はその地理的条件から始まっているのだ。

 かつてパンゲアという一つの大陸だった我々が住む世界も6つの大陸と多くの島に分かれてしまった。その後、我々人類が誕生した。そしてどこに住むのかによって我々の運命は左右されるようになってしまったのだ。

「地理」が習近平氏の支配体制を決めている?

 中国は、ロシアと同様、異様なほど広い国土を有している。その国土の多くの部分、特に内陸部は砂漠地帯などの乾燥地域が続く。内陸部の乾燥地帯は「ステップ気候」と呼ばれ、日本とは異なり大木が育つことはなく、背丈の低い草木が生える程度。草原気候とも言われる。

 そこで安定的に食糧を生み出すには大河川から灌漑などの大規模な土木事業を行い水を確保するしかない。よって、大規模な土木工事をするために大量の動員が可能になるよう広い国土を中央集権的に治める制度が確立されてきた。欧州のように高い木々や山脈が大地をさえぎることがないので、複数の国に分かれることもなかった。

 巨大な国を作り、それを中央集権で束ね、巨大なインフラを建設して生きていくために、道路や文字や暦や単位を統一し、巨大な領地を隅々まで管理するために官僚制度を作り出した。

 また騎馬民族の存在も大きい。ステップ気候帯は定住には適さない環境のため、常に移動する生活スタイルが確立した集団が常に存在した。彼らは気候の変化によって南下し、機動力・狩猟能力に長けていたので、それを戦闘力に転換しやすく、常に定住する人々の脅威になった。

 中国はその騎馬民族らから広い国境線を守るのに必死だったのだ。中国は万里の長城などの軍事インフラ構築や軍隊整備を行って、騎馬民族の来襲から自らを守るためにも、統一した文字や暦や単位や官僚制度を作り出した。

「中国はなぜ中央集権的なのか?」への答えが少し見えてきたのではないか。中国が中央集権的、強権的なのは、こういった中国の地理的な制約があるのだ。「地理」によって、「統治体系」が決まり、歴史が作られた。「地理」つまり「場所」というのは、国において、運命を決定づけてしまう重要な要素なのである。