内閣改造に注文をつけた
森元首相と麻生副総裁

 人事を間近に控えた8月下旬から9月上旬、岸田首相に注文をつけていた人物がいる。一人は、今なお「安倍派のドン」として君臨する森喜朗元首相である。

 森氏は、8月29日、東京プリンスホテルで開かれた青木幹雄元官房長官のお別れの会で、「心残りは小渕恵三さんのお嬢さんのこと。あなたの夢、希望がかなうように最大限努力する」と語っている。

 その森氏は、同時期に岸田首相と電話で会談し、「『これなら衆議院解散・総選挙ができるよね』という顔触れにしたほうがいい」とアドバイスを送った。

 もう一人は、麻生氏だ。9月7日、東京都内のステーキ店で茂木氏と酒をくみ交わした麻生氏は、「茂木幹事長交代」「代わりに茂木派の小渕優子氏を処遇」で調整しようとしていた岸田首相に、茂木氏を外さないよう強く迫った。

 そもそも、86歳の森氏や82歳の麻生氏が今なお実権を握る政治に「刷新」など望むべくもないが、その森氏や麻生氏のアドバイスが、茂木氏留任と小渕選挙対策委員長就任の大きな後押しになった。

 小渕氏に関しては、岸田首相の頭の中に再入閣もあったとされる。ただ、小渕氏には、2014年、政治資金問題で経済産業相を辞任した黒歴史がどうしても付きまとう。当時、証拠となるパソコンをドリルで壊したことで、今もなお「ドリル優子」と揶揄(やゆ)され続けている。

 これに加え、「麻生氏のプッシュで留任した茂木氏が小渕氏の入閣には強く抵抗した」(自民党中堅議員)ため、選挙を取り仕切る責任者(実際には幹事長の茂木氏が最高責任者)に落ち着く形となった。

 その小渕氏は、9月11日、自民党の総裁室に呼ばれ、岸田首相と面会した後、ある政治ジャーナリストに電話を入れている。「特にポストの打診はなく、政権への感想を聞かれただけ」と語ったそうだ。

 実はこのとき、選挙対策委員長を打診されたとみられるが、就任後さっそく、「週刊文春」が、小渕氏の関係政治団体が、2015年以降、7年間で1400万円以上を自身のファミリー企業に支出していたとする疑惑を報じている。

「決して忘れることのない傷。今後の歩みを見ていただき、ご判断いただきたい」

 9月13日、就任会見でこのように述べた小渕氏には、あらためて説明責任が問われる可能性がある。