職場で困っている人を見かけても、「おせっかいだったらどうしよう…」と躊躇したり、「たぶん大丈夫だろう…!」と自分に言い訳したり……。
気づかいをするときには、つい「心の壁」が現れてしまい、なかなか一歩が踏み出せないことが、あなたにもあるのではないでしょうか?
この連載では、「顧客ロイヤルティ(お客さまとの信頼関係づくり)」をベースに、ビジネスセミナーへの登壇やコミュニケーションスキルの研修講師を通して、全国200社・2万人以上のビジネスパーソンに向けて教えてきた『気づかいの壁』の著者、川原礼子さんが、「気がつくだけの人」で終わらず、「気がきく人」に変われる、とっておきのコツをご紹介します。

「電話の第一声が不快な人」が言ってしまっていることPhoto: Adobe Stock

電話で言ってしまいがちな「第一声」とは?

 最近、電話に慣れていない若手が増えています。

 しかしそれは、若手を教えている中堅社員にも問題があるのではないかと思います。

 私は、社員研修をする機会が多いのですが、かつては新入社員研修で伝えていた基本を、中堅社員にも伝えないといけない必要性を感じます。

 それは、ある一言がきっかけでした。

 リモートワークが中心である企業で、BtoBの営業部門向けに研修していたときのことです。
 そこでは、電話のロールプレイングをおこなっていました。すると、

「お世話になっております。〇〇会社、△△と申します」

 と、名乗るケースが多いことに気がつきました。

 一言目から「お世話になっております」を使うのには、違和感があります

 また、「申します」という言葉は、初対面の人に自己紹介するときの表現です。

 ちゃんとした表現に変えるなら、

「お電話ありがとうございます。〇〇会社、△△です」
「はい、〇〇会社、△△でございます」

 などが相応しいでしょう。
 電話において、こうした第一声を言えるかどうかで、その会社の印象すらも変わってしまいます。

中堅社員も要注意

 さて、では、間違った方法をどこで学んでしまったのでしょう。
 それについて尋ねると、

「先輩がそう話していたからです」

 という回答でした。
 リモートワークが中心となっている企業では、たまに目にする先輩のしぐさや、耳にする言動が、貴重なお手本になっています

 すると、間違った方法が修正されないままに、放置されてしまっているケースが後をたちません。
 あらためて、中堅社員でさえも、初心にかえってやり方を見直すべきかもしれませんね。

 最近であれば、リモートワーク率が下がり、出社へと移行する企業が増えてきました。
 また、10月からは新しい採用者も入ってくる企業も多いと思います。

 誤った慣習がそのままになってしまうと、さらにお客さまに違和感を与えてしまいます。そして何より、あなた自身も恥をかいてしまいます。
 電話の受け答えのような「基本の基本」をいまのうちにおさらいしておきましょう

川原礼子(かわはら・れいこ)
株式会社シーストーリーズ 代表取締役。
元・株式会社リクルートCS推進室教育チームリーダー。
高校卒業後、カリフォルニア州College of Marinに留学。その後、米国で永住権を取得し、カリフォルニア州バークレー・コンコードで寿司店の女将を8年経験。
2005年、株式会社リクルート入社。CS推進室でクレーム対応を中心に電話・メール対応、責任者対応を経験後、教育チームリーダーを歴任。年間100回を超える社員研修および取引先向けの研修・セミナー登壇を経験後独立。株式会社シーストーリーズ(C-Stories)を設立し、クチコミとご紹介だけで情報サービス会社・旅行会社などと年間契約を結ぶほか、食品会社・教育サービス会社・IT企業・旅館など、多業種にわたるリピーター企業を中心に“関係性構築”を目的とした顧客コミュニケーション指導およびリーダー・社内トレーナーの育成に従事。コンサルタント・講師として活動中。『気づかいの壁』(ダイヤモンド社)が初の著書となる。