大阪・関西万博の出展を巡り異例のドタバタ劇が起きている。出展が内定していた大阪外食産業協会の辞退が取り沙汰されたのだ。協会は出展に前向きな姿勢だが、実現のハードルは高い。背景には関西の名門2企業の苦境が関係していた。20回超にわたり公開予定の特集『「大阪」沈む経済 試練の財界』の#8では、異例の内定辞退騒動の舞台裏に迫る。(ダイヤモンド編集部副編集長 大矢博之)
大阪外食産業協会で異例の「出展内定辞退」騒動
新会長は「出展に向けて全力」と報道を否定
万博で異例の「出展内定辞退」は起きるのか――。
8月12日、大阪市浪速区の大阪木津卸売市場。約300年の伝統を誇り、「なにわの台所」として大阪の食を支えてきた民間卸売市場の一室に、関西メディアが集結した。
この日行われたのは、地元の外食業など537社を会員とする大阪外食産業協会の新会長の就任会見である。8月5日付で新会長に就任したのは、お好み焼きチェーンで知られる千房の中井貫二社長だ。
業界団体の新会長のお披露目がここまで注目を集めたのにはもちろん理由がある。大阪外食産業協会が内定を得ていた、大阪・関西万博のパビリオン出展を辞退するという報道が数日前に流れたからだ。
2025年日本国際博覧会協会は2月、13の企業・団体が民間のパビリオン出展者に内定したと発表した。大阪外食産業協会は、「食べる!笑う!生きる!が世界から集まる!『新・天下の台所』」というテーマで内定を射止めていた。
ところが5月30日、民間出展者がパビリオンの構想の概要を説明する発表会を、大阪外食産業協会はなぜか欠席したのだ。こうした経緯や、新型コロナウイルスの感染拡大やインバウンド需要消失による大阪の外食業界のダメージが大きいこともあり、内定辞退報道は現実味があると受け止められた。
注目の会見で中井会長は、「博覧会協会に辞退を申し入れた事実はない。継続協議中」と述べた上で、「大阪の飲食店が万博に反対だという印象を与えることを懸念している。パビリオン出展に向けて全力で取り組む」と熱弁を振るった。
「どうして内定辞退と報じられたのか分からない」。大阪外食産業協会の事務局はこう困惑する。
しかし、大阪外食産業協会のある関係者によれば、8月5日の理事会で出展を巡る議論が交わされ、「出展に『課題がある』という結論だった」という。
実は、この課題は、ある関西の名門2企業の苦境と関連する。そして課題の深刻さが、大阪外食産業協会の出展に向けた大きなハードルとして立ちはだかる。
次ページでは、出展の可否を左右する名門2企業の実名とともに、この事態を招くことになった大阪外食産業協会の内部のゴタゴタを明らかにする。さらに、地元企業にもかかわらず、大阪外食産業協会とは距離を置き、別枠で出展枠を確保した「えげつない」超有名外食チェーンの実名も紹介する。