「成功のイメージ」に
逃げ込んではならない
『毎日、この写真を見ながら、この車の主人になった姿を生き生きとイメージしなさい。そうすれば、その通りになるでしょう』
だからわたしもビジョンを持って、毎日自分が成功した姿をイメージしています。ところが、いくら切実に願って、生き生きと思い描いてみても、まったく事情がよくなる兆しが見えてきません。いったい何が問題なのでしょうか」(販売実績の不振に悩む40代営業マン)
「切実に願えばかなう」「生き生きとイメージすれば夢が現実に変わる」――この自己啓発の法則は、昔から聞き飽きるほど強調されてきたことだ。
ところが、このような話を絶対の真理であるかのように信じている人たちには申し訳ないが、ひとつ悪い知らせをお伝えしなくてはならない。残念ながら多くの場合、これは真実ではないということだ。
「切実に願い、生き生きとイメージしさえすれば、夢がかなう」といったプラスの自己暗示は、実際には思ったより効果がなく、目標を達成するうえでかえって邪魔になることもある。
心理学者のリエン・ファム(Lien Pham)は、ある大学生のグループに中間テストで高い点数を取った場面を「毎日生き生きとイメージしてごらん」と言って、そうでない大学生のグループと実際の中間テストの点数を比べてみた。研究の結果は予想を裏切るものだった。高い点数を取ったのは、イメージしなかった学生たちだったのだ。イメージした学生たちはかえって勉強時間も少なく、成績も低かった。
実際、切実に願えば必ずかなうとか、生き生きとイメージすれば何でも実現するということを法則のように信じる人たちの中には、大失敗をした人が意外に多い。
その理由を、2002年にノーベル経済学賞を受賞したプリンストン大学のダニエル・カーネマン(Daniel Kahneman)名誉教授はこう説明している。自信過剰になって計画を膨らませすぎた結果、「計画誤信(Planning Fallacy)」を引き起こすためだ、と。