西武百貨店と西武鉄道の特殊な関係
池袋本店は“持ちダマ”で振り回された
電鉄系百貨店の中でも、西武池袋本店は、他と事情が違う。西武百貨店はもともと西武鉄道から分離したセゾングループ傘下にあり、同グループが事実上崩壊した際、そごうと経営統合した上で05年に全株をセブン&アイHDに売却、という経緯をたどっている。つまり、西武鉄道との直接の関係は、とうの昔に切れているのだ。
なお、鉄道とセゾングループの分離は、元はといえば西武鉄道の社内事情(中興の祖・堤義明氏が流通部門を堤清二氏に引き渡した)が発端だ。約3000億円あるそごう・西武の負債も、バブル期に出店した地方店や旧そごう店舗の業績不振の影響が大きい。西武池袋本店は一定の利益を出し続けながら、そうした西武グループの内部事情や、全体の経営改革の“持ちダマ”として振り回されてしまった感がある。
西武ホールディングスの後藤高志CEO社長は、「池袋が家電量販店の激戦区になるのは好ましくない」「百貨店の文化的側面を大切にしたい」などと述べ、その行く末を案じていたようだ。せめて一定数の株を持っていれば具体的な行動に移れるが、全株を売却している以上、アクティビスト(物言う株主)である米投資ファンドの手に渡ってしまった西武池袋本店を、西武鉄道はどうすることもできない。※ただし西武HDは、そごう・西武に土地や建物の多くを貸す「大家」である。