比べてみよう!梅田阪神と梅田阪急
驚きのキャラの違いと入店客数
梅田阪神と梅田阪急の百貨店としての戦略を簡潔に表すと、阪神が「庶民的・親しみやすい」、阪急が「高級感・ゴージャス」といったところだろうか。
梅田阪急はラグジュアリーブランドや宝飾品の販売に圧倒的な強みを持つ。23年3月期の売り上げのうち64%が識別顧客(カード会員など)によるもので、そのうち年間100万円以上購入した顧客が40%。外商やオンライン販売なども、コロナ禍前より伸びているという。
こうしたお得意さんは、阪急電鉄沿線に住む富裕層であることは疑いない。阪急沿線は創業者・小林一三が陣頭指揮を執って開発した高級住宅街が多く、「阪急梅田には親子2世代、3世代にわたって通っています」といった話もよく聞くほど、他社が追随できない顧客基盤を築いている。同じ高額商品販売でも、多くの百貨店が外国人観光客(インバウンド)の“爆買い”頼みなのとは大違いだ。
一方で梅田阪神は、食品の売り上げが全体の4割(百貨店の平均が2~3割)と、圧倒的な強みを持つ。特に総菜売り場では、通常のデパ地下より少しお得でクオリティーが高い商品も多く、仕事帰りの人々の“普段遣い”が目立つ。筆者も前述の優勝セールに出向いたところ、2人前・18貫の寿司が1188円(阪神デパ地下の名店「髭定」製)、記念ロゴ入りカスタードプリンが357円などと、庶民に優しい価格帯のものが多く、2000人もの行列ができたのも納得だ。
また、地下1階の飲食店街「スナックパーク」では、500円以下でいか焼きやラーメンを食べることができ、庶民の憩いの場になっている。夕方限定の「サク飲みセット」(いか焼き・一銭焼きなどの一品とビールで600円)が飛ぶように売れているフロアの上階で、ウン千万円のダイヤモンドやオパールリングが売られている…こんな「ごった煮」感も、梅田阪神ならではだろう。
化粧品売り場を比べると、どうだろうか。ブランドの先行商品や梅田阪急の限定商品を丁寧に案内してくれる梅田阪急に対して、百貨店なのにプチプラ(低価格帯)商品もそろえ、セルフカウンターも充実している梅田阪神。「美容部員さんのトークも梅田阪神のほうが面白い気がする」(大阪市北区在住の筆者の妻とママ友調べ)と、そのキャラクターは全く異なるようだ。
実はこの2店、売り上げは梅田阪急が圧勝だが、年間(23年3月期)の入店客数で見ると、梅田阪急が3565万人、梅田阪神が2916万人と、なかなか良い勝負だ。梅田阪神の方が圧倒的に客単価は低いが、2店とも百貨店として、それぞれ独自の進化を遂げてファンをつかんできたからこそ、生き残っていると言えるだろう。