私は一時、メガネブランド「JINS」を展開するジンズホールディングスの株を保有していたことがあります。これは創業者の田中仁さんの経歴や、会社の沿革を読んで非常に共感したからでした。

 田中氏はユニクロのように企画製造から販売までを一貫して行うSPAモデルをメガネ業界に取り入れ、事業を伸ばしました。しかし同業態の企業が増え、経営がうまくいかなくなり、ユニクロを展開するファーストリテイリングの柳井正会長に相談に行きます。そこで「君は何をやりたいのか」「ビジョンは何か」とひたすら問われた田中氏は、すぐに役員を集めて合宿をし、ジンズが何のための会社なのか改めて定義し直したといいます。そこから生まれた軽量フレームの「Airframe」シリーズは大ヒットし、ジンズにとって起死回生の一発となりました。

 私もよくプロダクト事業をアドバイスする立場で、既存のビジネスについても新規事業についても「ビジョンは何か」と聞くことがあります。ジンズホールディングスのエピソードからは、成長のためには会社の核となるものが必要だということが改めて学べます。

投資を通じて自分が知らない
業界のビジネスモデルを知る

 ビジネスモデルについても、投資を通じて自分の知らない業界の話を知ることができます。以前の記事『リセッションをDXで生き残る!デジタル投資とプロダクトマネジメントを加速するには』の中で回転ずしチェーンの話を取り上げましたが、実は自分自身がこの業界の株を買おうとして調べたことがきっかけで、知識を得たのです。飲食業における食材と人の費用の抑制や、コロナ禍以降のDXへの取り組み、食材購買の交渉力の強弱など、株を買おうと思ったからこそ、いろいろ興味が出て知ることができた情報でした。

 こうなってくると、街を歩いていても知っているようで知らないことが、世の中にたくさんあることに気づきます。投資しようとしている会社が同業他社と何を差別化しているのかまで知るようになると、自分の仕事でも何か、そうしたビジネスモデルの工夫が生かせないか考えられるようになってきます。

 株式会社というのは、基本的には株主の利益を最大化するためにあります。では、株主の利益とは何でしょうか。売り上げを上げることも当然ですが、顧客の利益の最大化も同時に実現するのが、企業のあり方としては正しいと私は思います。