複利の力の偉大さについては、アインシュタインが「人類最大の発明」という言葉を残したともいわれています。私はよくビジネスや事業でも「スケールするか」という話をしますが、単発で儲けるだけでなく、儲けたものをさらに投資に回すことでさらに利益が増幅していくというのは、とても大事な考え方です。

 元本が倍になる期間が簡単に分かる「72の法則」という式があります。例えば年に6%増えるものに投資し続けると、お金が倍になる期間は72÷6=12年となります。こうした複利の効果を知っていると、その知識を自分のビジネスにも生かせるようになります。

 また、金融商品の売買で上がった利益は、20%を税金として納めなければならないので、税引き後利益を念頭に置いて取引を行う必要があります。株取引でも外貨預金でも、単純な価格の上下で一喜一憂するのではなく、NISAなどの制度を使って税金を取られないようにすることを考慮しなければ、利益がほとんど残らない可能性もあります。

 税引き後利益について考えることも、会社のお金の考え方に通じます。利益をお金として持っていることで税金を払うのではなく、必要なものに投資して回していく重要性が分かるからです。脱税という意味ではなく、正しくお金を使い続けて社会に還元し、会社の成長にもつなげる。これは個人の資産においても同じですし、キャッシュフローが大切だということもよく分かります。

 日本では家計が投資に回っていないだけでなく、企業にも内部留保としてお金が死蔵されている状態のところがたくさんあります。最近、東京証券取引所はPBR(株価を1株あたり純資産で割った値)が1.0を切る企業に対して、改善策を開示・実行するように要請しました。PBRが高い会社は、成長や研究開発、人的資本に適切に投資をしています。そういうことも、投資を続けていると分かってくることです。

投資する企業のトップの姿勢から
会社の成長について学ぶ

 個人的に投資をすることで私は、他社のビジョンやビジネスモデル、事業開発・運営のあり方や組織運営を含めた経営を学ぶこともできました。

 最初は雰囲気だけでいろいろな会社の株を買って失敗していた私も、最近では真面目にその会社について調べるようになりました。投資しようと思って調べると、さまざまな業界や企業について知ることができます。

 どんな会社も企業のトップが会社の意思決定において重要な役割を果たしていて、ビジョンやミッションなどを決める立場にあります。IR(投資家向け広報)の発信や株主総会での発言からトップの姿勢を見ていくことで、学べることは多いです。