給与収入だけで老後資金をまかなえるのか不安に思う人が増えている。多くの人にとって「投資」が避けて通れない時代になってきた。資産を増やすという点で大きな選択肢の1つになるのが株式投資だ。「株投資をはじめたいけど、どうしたらいいのか?」。そんな方に参考になる書籍『株の投資大全ーー成長株をどう見極め、いつ買ったらいいのか』(小泉秀希著、ひふみ株式戦略部監修)が発刊された。「ひふみ投信」の創始者、藤野英人氏率いる投資のプロ集団「ひふみ株式戦略部」が全面監修した初の本。株で資産をつくるためには、何をどうすればいいのか? 本連載の特別編として、著者の小泉氏による書き下ろし記事の第8回をお届けする。今後の資産形成の参考にしていただきたい。

【新NISAを100%活かす投資術 第8回】優良不動産に投資して高利回りを得られるREITは、投資対象に入れるべきか?Photo: Adobe Stock

REITは不動産投資のリスクと
面倒を省いてくれる金融商品

 REIT(リート:不動産投資信託)もNISAの投資対象となる代表的な高利回り金融商品の一つだ。

 REITは正式には上場不動産投信といって、投資家から集めた資金を賃貸不動産に分散投資して、そこから得られる収入を投資家に分配する、という仕組みの金融商品だ。証券取引所に上場しており、株と同じように売買することが可能である。日本のREITのことを特にJ-REITという。

 不動産は株式と並び有望な投資対象であるが、1件当たりの投資金額が高額な上に、物件選びが難しく、購入後の運用やメンテナンスなどの手間もかかる。知識があり、時間がかけられる人にとっては良い投資対象でも、一般の人にはなかなかハードルが高い。

 しかし、REITは、不動産のプロが好立地の好物件を選別して分散投資し、運用やメンテナンスも行ってくれる。当然そのコストは差し引かれるが、不動産投資にまつわるさまざまな手間やリスクを大幅に軽減してくれる金融商品だ。

 J-REITは、現在60銘柄が東京証券取引所に上場していて、分配金利回りの水準はおおよそ3%台から5%台、平均すると4%程度だ。

 REITの種類としてはオフィス、住宅、商業施設、物流施設、ホテルなどさまざまなタイプのものがある。こうしたカテゴリーにこだわらず、さまざまなタイプの物件に投資する総合型もある。

どのREITに投資すればいいか?

 では、REITに投資する場合、どのように銘柄を選んだらいいのだろうか?

 結論を言うと、REITに分散投資する投資信託に投資するのが一番無難だ。

 J-REIT全体の動きを示す指標として東証REIT指数があるが、この東証REIT指数に連動するように運用されている投資信託やETF(上場投信)が投資対象として考えられる。世界のREITに分散投資する投資信託やETFもある。

 つみたてNISAの対象となっている投資信託はほとんどないが、株とREITと債券に分散投資するようなタイプのファンドはいくつも存在する。また、成長投資枠で東証REIT指数に連動する投信やETFに投資するのも良い選択肢の一つと言えるだろう。

REITは、長期的に見れば債券よりも優れた投資対象

 同じように安定した高利回りの金融商品ならば、債券型の投資信託はどうだろうか。

 最近は世界的に債券利回りが上昇していることもあり、債券で運用する投資信託の分配金利回りも5%前後、あるいはそれ以上のものも出てきている。

 しかし、債券はインフレに弱い。ここから長期的な資産運用で考えるべき大きなテーマはインフレ対応であり、その観点で債券はあまり魅力的に思えないし、インフレに負けるリスクもある。

 それに対して、不動産はインフレに応じて家賃収入も上昇することが見込める。つまり、REITは高利回りであるだけでなく、インフレ対応もできる優れた商品なのだ。

 REITはそれなりに価格変動するが株式ほどではなく、「高利回りを安定してもらいたい」というニーズは満たしてくれる商品だ。価格変動にとらわれず、安定して収益を得たい人には向いている金融商品であるといえる。

REITより有望な不動産投資の手段とは

 以上のように、REITは、長期的な資産運用を考える際に検討に値する優れた商品だ。各自のニーズや好みに合うのなら十分に投資対象になり得ると思う。現在60ある個別銘柄を調べて、その中から投資するのも良いと思う。

 しかし、筆者個人的にはREITへの投資は考えていない。

 それは、「REITよりも株式の方が圧倒的に割安感が強い」と考えるからだ。特に、個別株ではあまりにも割安感が強いものが多い。不動産に興味があるなら、長期的に見てREITよりも不動産株のほうが妙味が大きいのではないかと思う。

 そこで、次回は、個別株投資の可能性についてより具体的に考えてみたい。

(※本稿は、書き下ろし記事です)

小泉秀希(こいずみ・ひでき)
株式・金融ライター
東京大学卒業後、日興證券(現在のSMBC日興証券)などを経て、1999年より株式・金融ライターに。マネー雑誌『ダイヤモンドZAi』には創刊時から携わり、特集記事や「名投資家に学ぶ株の鉄則!」などの連載を長年担当。『たった7日で株とチャートの達人になる!』『めちゃくちゃ売れてる株の雑誌ザイが作った「株」入門』ほか、株式投資関連の書籍の執筆・編集を多数手がけ、その累計部数は100万部以上に。また、自らも個人投資家として熱心に投資に取り組んでいる。市民講座や社会人向けの株式投資講座などでの講演も多数。
ひふみ株式戦略部
投資信託ひふみシリーズのファンド運用を担うレオス・キャピタルワークスのメンバーにより構成された本書監修プロジェクトチーム。
ひふみ投信:https://hifumi.rheos.jp/