とはいえ、やみくもにドタバタすればいいというものではありません。相手の視線が集まるところで、印象に残る動きをすることが肝要。それを可能にするのが「手」です。

 人の話を聞いているとき、私たちの視線は、話している人の眉間から胸元までの30センチくらいの範囲に集中します。そこを「ストライクゾーン」と呼び、効果的に手を動かすことで、ポイントを強調したり、話にメリハリをつけたりすることができます。

 例えば、「右肩上がりの業績」を表すなら手を斜めに上げていきます。「頑張りましょう」「お任せください」などと、力強さを表現したいなら、胸元で拳を握って見せてもいいでしょう。「すごく短時間でできます」とアピールしたいなら、「短時間で」のところで、親指と人差し指を近づけ、短さを強調することもできます。感謝の気持ちを伝えたいなら、胸元で手を合わせながら「ありがとうございます」と言ってもいいでしょう。

 このように重要な言葉の場合、ジェスチャーをつけることでその動作が脳裏に深く刻まれ、後で思い出したときにその手の動きと共に紐づけられた言葉が引き出されます。だから時間がたっても覚えていられるのです。

 ただし、手は強力な武器になりますが、使い方を間違えると逆効果です。張り切って動かしすぎると、ポイントがどこなのか、一番伝えたいことが埋もれてしまいます。髪の毛を触ったり、机をトントンと叩いたり、やたらとペンをいじったりするのも、落ち着きがなく、集中できていない印象になります。いずれも、相手に不快感を与え、損をする手の動きです。しかし、こうしたことは、一種の癖で、無意識にやってしまうことが多いので注意が必要です。

 自分の無意識の癖を知るためには、オンライン会議での様子を録画して見直すなどが有効です。信頼できる同僚と、遠慮なく指摘し合うのもいいでしょう。

「聞く」よりも「聴く」のが大切
適切なリアクションも忘れずに

 よく「話し上手は聞き上手」と言いますね。つまり、会話とはどちらかが一方的に発するものではなく、あくまでキャッチボールだということです。

 社交ダンスを例に取ると分かりやすいでしょうか。男性と女性がペアを組む社交ダンスでは、一方が前へ踏み出せば他方は後ろへ引くという呼吸が大事。その呼吸が合うと、疲れることなく自然に美しく踊れます。どちらかが踏み出しっぱなしになったり引きっぱなしになるということはありません。