ソファの向きを変えただけで自然に家族関係がアップ!

 そこで提案したのが、テレビの位置とソファの位置を反転すること。次の図のように、ソファとテレビ、ダイニングテーブルの位置関係を変えたのです。

 これで家族の顔が全員見える位置関係になりました。全員が同じテレビを観て笑ったり、会話ができます。つまり、努力しなくても自然に会話が生まれて、みんなが家族の輪の中に入れる。家族関係がよくなるレイアウトになったのです。

 そしてもうひとつ行ったのが、ソファの後ろに1人掛けのチェアを置くこと。もちろん妻専用の椅子です。

 彼女は読書が好きだったので、ここで一人でゆっくり本を読めるようになりました。ソファの背面にソファよりも少し高さのある本棚を置くことで、パーティション代わりになり、落ち着いて本が読めるのです。

 そして半年後。私のもとに、彼女からライブのお知らせが届きました。なんと家具の配置を変えたあと、「私は歌が好きだったんだ」と思い出して歌を本格的にやり始めたのです。さらに数年後には、驚くことにリオのカーニバルに参加しているそうです。自分の居場所をもったことで「自分の好きなことをやってもいいんだ、ありのままの自分でいていいんだ」という自己肯定感が満たされていったのでしょう。

 その後、「主人との会話が確かに増えました!主人が前より優しくなって、今はもっと仲良くなりました」というメッセージをいただきました。

 このように、大がかりなリフォームをしなくても、家具の配置を変えるだけでも、家族関係にいい影響を与えることができます。居心地の悪さだけでなく、日々のストレスや夫婦の会話の量、自己肯定感までが、間取りや家具の配置のせいということがあるのです。

 これまでも、住まいを変えたら、居心地がよくなるだけでなく、夫婦関係がよくなったり、自分に自信が持てたりする方を見てきました。今までの「機能的で」「美しく」「住みやすい」部屋づくりの常識だけでは、心まで満たすことはできないのです。

 空間は、意思より強く人生に影響します。「家族の会話を増やそう」「今日こそ、笑顔で話そう」なんていくら思ったとしても、レイアウトが以前のままだったら、ずっと心が満たされなかった可能性があるのです。