長期・中期・短期の時間軸を持つ
青野 サイボウズの「Myキャリ」制度では、やりたい業務や行きたい部署だけでなく、「◯年以内」というふうに具体的な時期も書き込むようになっています。
佐宗 いいですね! 「やりたいこと」を最大限に活かすには、時間軸を共に共有することが大事だと思います。
僕のBIOTOPEでも、各自のやりたいことを共有し合うときには「短期・中期・長期」の時間軸をベースにするようにしました。「やりたい!」と言っていることが20年後の話なのか来年の話なのかわかったほうが、周りも支援しやすいんですよね。
青野 非常に共感する話です。佐宗さんの書かれた『理念経営2.0』で注目すべきポイントの一つが、まさにその時間軸についての記述ですよね。どういう時間スパンで理想を語っているのか。私たちはつい、短期のことばかり考えてしまいます。それに、短期と長期を考えても、そのあいだがうまくつながってないことも多いです。短期・中期・長期に整理して自分の理想を語るだけでも、チームのあり方が最適化されると思いますね。
逆に質問ですが、佐宗さんはなぜこのような「理想の時間軸」という発想に至ったんでしょうか?
佐宗 僕の会社はデザインコンサルティングの仕事をメインにしてきて、多くの企業の未来をつくる支援をしています。新規事業などを支援するときは1~3年スパンの案件が多くなります。中期戦略であれば3~5年です。最近だと「長期ビジョンをつくりたい」という相談が増えていて、そうなると10年スパンでの支援になってきます。すべて同じ「未来づくりの支援」なのですが、1年、3年、10年とどのスパンで未来を考えるかによって、アプローチも思考のモードもまったく違ってくるんですよね。
いままでかなり長いあいだ、日本企業のほとんどは短期の時間軸ばかりを重視してきました。でも、それだと方向性が見えないことがわかってきて、最近ではやはり長期の時間軸で考えるように方向転換しつつあります。
ただ、長期軸だけでは組織は動いていきません。長期の軸をベースにしながらも、組織が渡り鳥の群れのように「個であると同時に群れとして」自律的に動くにはどうしたらいいのだろうか? そういう部分に課題を感じて書いたのが『理念経営2.0』という本なんです。
青野 おっしゃるとおり、日本企業は短期の軸を意識しすぎだったんでしょうね。それが高度成長経済時代からずっと続いていて、いまだに大企業で新規事業をやろうとすると、「それって来期にはどれくらい儲かるの?」みたいに短期的に黒字化を求められるわけです。
たとえばアメリカの企業では、「100個仕掛けてみて3つ当たったら大成功」というスタンスですよね。彼らのほうが長期の軸で見ているなと思います。日本企業に長期の軸でもう一度考えようと促すのはとてもいいアプローチですよね。
(第4回に続く)