子どもが第一義に考えられて然るべきだが、むやみに保護者を否定する向きも歓迎はできない。保護者あっての子どもなのだから、保護者のあらを無理くり探すより、まずは保護者をサポートできる道を探った方が建設的である。
かくして改正案に反対する正論は、国民感情と結びついて巨大な渦となり、国内を席巻したのであった。
日本と異なる海外の留守番事情
子どもの自立心を育むイベントでは?
一方、欧米諸国では子どもの留守番を虐待と定義づけている国が散見される。子どもだけの留守番には、地震や火事などの災害、侵入者による犯罪、感電や滑落の事故などのリスクが増すことと、実際にそれが起きたとき子どもだけでは対応しきれないであろうことがその主な理由である。
日本と諸外国を比べるときは、それぞれの環境の違いに留意しなければならない。治安のよい日本では保護者が子どもを留守番させることに、諸外国の保護者に比べれば抵抗を覚えないはずである。
一方、多くの州で子どもの留守番に関するガイドラインを持つ米国では、ベビーシッターやナニー、学童保育的なサービスが充実していて、子どもの留守番を回避させやすい仕組みが整っている。
また、子育てスタイルの違いもある。試しに世界の母子のベッドシェア率を見てみると、大まかに「子どもの自立心を育む西洋」と「ある程度大きくなるまではみっちりお世話する東洋」の感がある(※余談だが、以下の参考記事によれば子どもの独り寝に自立心の早期育成効果はないらしい)。
【参考】PRESIDENT WOMAN
「最新の研究が明かす「子どもは何歳から一人で寝るのがいいのか」
https://president.jp/articles/-/32764
日本人にとって、乳幼児期からなるべくそばにいて面倒を見てきた子どもに留守番をさせるということは、保護者と子ども本人にとって一大イベントであり、子どもの自立心を育む契機として保護者がそれを捉え、子どもにもその姿勢で接すれば(留守番ができた子を褒めるなど)、留守番が子どもにとってプラスの影響を与えうることもごく自然に考えられる。だから、留守番が必ずしも悪いものと断じる必要はないのではないか。
欧米ブランドに弱いのが日本であり、筆者自身もその筆頭だが、なんでもかんでも欧米的価値観をありがたがることなく、日本は日本の良さを見出していけばよろしい――。