短期間で英語を話せるようになりたい――そんな人に試してほしい1冊が『中学英語だけで面白いほど話せる!見たまま秒で言う英会話』だ。「イラストを見る→見たままを英語にする」を繰り返すことで、日本語を介さずに瞬時に即答する「英語の反射神経」を鍛えることができる。実践的な話す力を養うための最適な1冊だ。本稿では著者の森秀夫さん(麗澤大学外国語学部教授)に「音読のトレーニングで得られる4つの学習効果について話を聞いた。

英語を読むときは必ず声に出す。それだけで英語の上達が早くなる4つのワケPhoto: Adobe Stock

同じ英文を100回以上音読したことはありますか?

――本書では、英語を声に出すこと、音読の重要性が強調されていますが、森先生ご自身はどのように音読のトレーニングを経験されてきましたか?

森秀夫(以下、森):音読で一番印象が強いのは、学生時代の経験です。

 当時は、音声教材も十分に入手できませんでした。そのため、発音方法やイントネーションについては、先生や先輩の指導を受けました。

 私は、ESSというサークルに所属していたのですが、結構熱心な先生と先輩がいて、丁寧に発音指導を受けました。

 例えば、スピーチコンテストに年2回は出場すること、年2回は3泊4日の英語合宿に参加すること、週2回は英検1級の2次試験のような1分間スピーチを行うこと、学年ごとに発表する英語劇、ディベートなどたくさんの活動がありました。

 特に、英語劇の際には、500回以上は音読や発声の練習をしました。

 たとえば、『星の王子様』で有名な作家、サン=テグジュペリの名言の1つである“Love does not consist in gazing at each other, but in looking together in the same direction.”「愛はお互いを見つめ合うことではなく、ともに同じ方向を見つめることである。」は、今でもスラスラ口から出てくる英文です。

 何も考えずにスラスラ言えるようになれば、自分で英語を話すときにも、“consist in ~”という表現を使えるようになるわけです。

――それは、本格的な英語サークルですね。

:そうですね。ほかにも、スピーチコンテストに出場する際には、5分間のスピーチを自分で考え、ネイティブにチェックしてもらった後に、何百回も音読や発音練習をした記憶があります。

ほとんどの人が、音読のトレーニングをしていない

――学生でも社会人でも、音読するより、単語や文法を覚えることに時間を費やす人が多いのではないでしょうか?

:「英語が好きで、英語を話せるようになりたい」という中高生は増えています。

 そのような生徒に「今、どんな勉強していますか?」と聞くと、「英単語を暗記しています」「問題集を解いています」「定期テストで高得点をとれるように勉強しています」という回答が多くあります。

 残念ながら、「毎日、50回以上音読をしています」という回答は、ほぼありません。

「音読を制する者は英語を制す」と言っても言い過ぎではないほど、音読は大切なトレーニング方法です。

 しかし、現実には、音読トレーニングは学習方法として浸透していないのかもしれません。

【音読の効果1】
リーディング力の向上

――音読のトレーニングに意識が向かないのは、その効果が十分に認識されていないからではないでしょうか。音読の効果とは、どのようなものでしょうか?

少なくとも4つの効果があります。1つ目の効果は、リーディング力の向上です。

 声に出すことで、英文を英語の語順のまま理解するので、直読直解のトレーニングになります。

 日本語に訳さず、英語のまま理解する習慣が身につくのです。

 特に、英語の語順で英文を理解する力は、「返り読み」ができない音読だからこそ得られる学習効果です。

――「返り読み」とはなんでしょうか?

:「返り読み」とは、一度読んだ英文を、戻って読み返してしまうことです。

 黙読だけをしていると、英文を頭の中で和訳しようとして日本語の語順を意識するため、「返り読み」をしてしまう人が多いのです。

 その結果、読解の速度が遅くなってしまいます。

【音読の効果2】
英語を使う力の向上

:2つ目の効果は、「英語に関する知識」を「英語を使う力」に変えられるようになることです。

 何度も音読することで英語が定着し、覚えた英語をスピーキングやライティングで使えるようになります。

 とくに、音読によって「英語特有のイントネーション」や「アクセントの強弱」、「リンキング」などが身につくため、英語の発音が矯正され、より明快で伝わる英語を話せるようになります。

 音読は、「学習した英語の知識」を「自分の言葉として使う力」に変換するためのトレーニングなのです。

【音読の効果3】
リスニング力の向上

:3つ目の効果は、リスニング力の向上です。

 自分で発音できる英語は聞きとることができるので、音読トレーニングで英語特有の発音を身につければ、必ずリスニング力が向上します。

 また、音読トレーニングで「返り読みをしない習慣」が身につくと、英語を聞くときにも、英語の語順のまま意味を理解できるようになります。

【音読の効果4】
英語の発音に必要な口まわりの筋力アップ

:4つ目の効果は、「英語を話すための口の形」を作れるようになることです。

 英語の発音は日本語とは違うため、音読をすると、口まわりの使い方が違うことに気づきます。音読で口まわりの筋力トレーニングができるのです。

 例えば、日本人が苦手なsea[síː]とshe[ʃiː]の発音の違いは、意識して音読トレーニングをしないと身につきません。

 口の使い方が違うということは、口から出てくる音も違います。音読は、発音を良くする練習になります。

参考文献:『音読で外国語が話せるようになる科学』(門田修平・著 SBクリエイティブ)