営業のみならず
デザインもアウトソーシング
2012年のヘアアイロン発売に続き、2020年にはヘアドライヤーも発売。KINUJOの商品コンセプトは「日本初」という斬新な機能や技術があるか否かだという。ドライヤーも例外ではなく、最新のモーターを使用することで、コンパクトな形状を実現させた。
「BLDCモーターという小さなモーターを日本、韓国、中国で共同開発し、5年をかけて商品化しました。従来のドライヤーだとモーターが大きい分、どうしても持ち手の上部が丸くなり、ボテっとした形状にならざるを得ませんでしたが、このモーターを使うことで、風量は弱めず、折りたためるほどコンパクトなドライヤーが完成しました。日本におけるコンパクトドライヤーの先駆けになったと自負しています。ヘアアイロンよりもマーケットの大きいドライヤーを商品化したことで、KINUJOの認知度は高まりました」
こうして、冒頭のようなシェア実績を同社は獲得してきているのだ。社員数6人という小規模で、ここまでの結果が出せるのはなぜなのか。その秘密は「可能な範囲でアウトソーシングする」ということだ。
例えば、大手メーカーであれば、数百人規模の営業を抱え、問屋を介さず、家電量販店への直取引を行うケースが多いとのことだが、KINUJOは問屋を介した取引スタイルを貫いている。
「問屋さんは我々の営業会社のような立ち位置と考えています。もちろん、問屋さんを介さないほうが利益は取れますが、営業マンを育てるコストや固定費を考えると、営業部門はアウトソーシングしたほうがいいと考えています。我々の方針は、会社の機能を技術開発や企画、プロモーションに集中し、それらにコミットできるコアメンバーだけで組織することです。そのため、餅は餅屋ではないですが、営業やデザインなどはアウトソーシングしているのです」
上條氏の言葉通り、営業担当者だけではなく、デザイナーも社内にいない。
「デザイン業務などは、常にトレンドを追って、いろいろなことをキャッチアップされている方にお任せしたいと思っています。社内に置いてしまうと、我々の仕事しかしなくなるため、どうしても視野が狭まってしまうのかなと。なので、外でいろいろな企業と仕事をしている方に、我々のビジョンやブランディングを伝えて、形にしてもらっています。また、広告の運用なども大手ではなく、規模の小さな企業にお願いしています。大きな代理店だと孫請け、ひ孫請けのようなビジネスモデルが多い。それだと我々の意図が十分伝わらないし、費用もかさみますから、アウトソーシング先はできるだけ直接的でスピーディーなやりとりができる形にしています」
また、ミニマムな会社にすることで、意思決定が早くなる点もKINUJOの強みだと言う。
「私か浜田のどちらかの決裁が取れたら、すぐにGOです。難しい提案書ではなく、箇条書きでいいよとメンバーには伝えています。その日のうちに数千万円の案件が決まったりするので、従業員にとっても仕事の裁量権は大きいと思います」
KINUJOで、マーケティングなどの企画立案を務める大森しほ氏は、意思決定の早さにこう言及する。
「2021年に家電量販店でのディスプレイ什器(じゅうき)をリブランディングしたときは年間7000万円くらいかかったのですが、それも数日で決まりました。なぜやるのか、なぜ必要なのかを社内チャットに投げて、すぐに決裁が取れたんです。スピーディーに判断してくれて、かつすべて任せてくれたのはありがたかったです」(大森氏)