Twitterのフォロワー数、17万人。人気コメンテーターで国際政治学者を名乗る三浦瑠麗氏のあるツイートをきっかけに、自分で自分を弁護する「本人訴訟」という形で、3年8カ月もの間三浦氏と裁判を争うことになったテレビ朝日の社員がいる。東大法学部卒、弁護士の資格を持つ元アナウンサーの西脇亨輔氏だ。三浦瑠麗という人物はなぜあれほど人気が出たのか、そして西脇氏はなぜこんな孤独な闘いに没頭したのか。彼が今、安倍政権時を振り返りながら思う「テレビメディアの責任」と、裁判の結果は――。(コラムニスト 河崎 環)
テレビ朝日社員vs三浦瑠麗
3年8カ月、自分で自分を弁護する「本人訴訟」で闘った理由
闘わねばおさまらない強い感情が、あった。
違うと叫ばねば、救われない自分がいた。
闘いの相手は、時の政権有力者の寵愛とも見える支持を得てメディアやネットで大きな影響力を持っていた人気テレビコメンテーター、三浦瑠麗氏。
『孤闘 三浦瑠麗裁判1345日』(幻冬舎)は、「ツイートによってプライバシー権を侵害された」として三浦瑠麗氏を提訴したテレビ朝日元アナウンサー・現総務局法務部長で弁護士の西脇亨輔氏が、勝訴にたどり着くまでの壮絶な道のりを描いた本だ。
「絶大な影響力を持つスターに、独りのサラリーマンが立ち向かった」(『孤闘』帯文句より)。しかも、自分で自分を弁護する「本人訴訟」という悲壮な形で。
文字通りの「孤独な闘い」を遂げた西脇氏はこう語る。
第一審から控訴審、最高裁での上告棄却によって西脇の勝訴が確定するまでの約3年8カ月、1345日間の影には私人としての当惑や怒り以上にネットの「表現の自由」への疑問があったのだと。メディア人かつ法律家として、現代のSNS攻撃やメディア言論へ一矢報いたいとの思いがあったのだ、と――。(以下、西脇氏の敬称略)