母親が父親を嫌っていることで、間接的に自分自身を嫌うようになったということに、Aさんはカウンセリングを通して気づくことができました。
自分自身が嫌いというよりは、「母が嫌いな父に似ている自分が嫌い」ということに気づいたのです。
さらには、母親が嫌っているのは父親であること、父親と自分は別の人間であることについても、時間をかけて理解していきました。
カウンセリングから数か月たつ頃には、「昔ほど、自分のことが嫌いではなくなった」と笑顔を見せるまでになりました。
「自分を好きになれない人」は
意外に多い
自分のことが好きだと思えるなら、それはそれで素晴らしいことです。
ですが世の中には、さまざまな事情から自分のことを好きだと思えない人がいます。好きだと思えないどころか、Aさんのように自分に強い嫌悪を抱いている人もいます。
自分が好きではないとしても、自分が嫌いだとしても、まったくおかしなことではありません。
好きだと思えないのには、原因があるからです。
生まれながらに、自分を嫌いな赤ちゃんはいません。
赤ちゃんがはじめて出会い、最も密に触れ合う人、それが親です。
つまりは、子どもの頃に親とどう関わってきたかが、「ありのままの自分でいいと思えるかどうか」に強い影響を及ぼします。
誰もがうらやむ美貌や頭脳を持っていても、自分を嫌いなことがあります。
自分を好きになるも嫌いになるも、周囲との関わりがあってのことなのです。
私がここでお伝えしたいのは、子どもの頃にありのままでいいと思わせてもらえなかったから、あきらめるしかない、ということではありません。
あなたが今「ありのままでいい」と思えない原因は、あなたの何かが悪いとか何かが足りないせいではなく、子どもの頃にそう実感できなかっただけなのだということを知ってほしかったのです。
大人になったあなたは、子どもの頃とは違って、親に認めてもらえなくても生きていけます。
子どもの頃は「その家」で生きていかなければならなかったわけですが、今はもう生きる場所を選べます。
誰とどう付き合うのかは、自分で決めていいのです。
大丈夫。
今のあなたはもう、自分で自分を認めて生きていけます。
まずは自分が自分を信じてあげましょう。
精神科クリニックに併設のカウンセリングルームで10年以上、心理カウンセラーとして勤務した後、独立。現在は人間関係、親子問題、機能不全家族専門カウンセラーとしてメールでのカウンセリングを中心に活動。メールでのカウンセリング、対面カウンセリングともにいつも予約がいっぱいで、現在も数か月待ちの超人気カウンセラー。
著書に『あなたはもう、自分のために生きていい』(ダイヤモンド社)などがある。最新刊は『悪いのは、あなたじゃない』(ダイヤモンド社)。X(旧Twitter)@Poche77085714
※本稿は、Poche著『悪いのは、あなたじゃない』(ダイヤモンド社)から抜粋し、再構成したものです。