「民間は常に競争、政界は旧態」って本当?

藤田 このあたりの話は結構誤解を受けがちで、うちの党は自衛隊の待遇を上げようと言っていて、ボロボロの官舎建て替えもすべきだとの立場です。一方で民間は人手不足の中、創意工夫をして苦労して賃金を決めているのに公務員だけがただ厚遇されているのでは違和感もあります。要は予算の使い方を合理的にやろうというわけです。

 でも、合理的な政治っていうのは既得権があるとできない。会社経営も一緒。技術も低くて料金も高いのに、社長の友達がやっているからという理由だけでつながっている下請け会社があったりする。しかし、そこで合理的に経営するなら、コンペ方式にして公明正大に発注先を決める方針に変更します。

 ところが今の政治は合理的にやろうとする構造的に空回りします。だから、身を切る改革は、公務員の給料をただ減らすという表層的なことではなくて、まずは税金をいただいて差配する側の政治家からえりを正さねばという覚悟を示す意味があるのですね。

田端 その点はわかるんですが、一つ異論があるのは、永田町の皆さんが「民間の皆さんは厳しい競争をしていて永田町は旧態依然として長老支配が続いている」的な話に僕はそうなんのかな……と思うところもあるんですね。僕は政治の世界の方が結構、新陳代謝が効いていると思っていて(苦笑)。

藤田 そうなんですか。

田端 確かに政治の世界には自民党の二階俊博さんみたいな方もおられますが、マスコミなんかフジテレビの日枝久さん(会長)は85歳、読売新聞のナベツネさん(渡辺恒雄代表取締役主筆)は97歳でずっといるんですよ!(笑)

 先日、キヤノンの御手洗冨士夫さんが株主総会で取締役の再任決議があわや50%を切りそうになっていましたが、そもそも株主総会で取締役の選任を否決された例って、経営権争いとかをしている場合を除くと、めったにないじゃないですか。

 だから永田町で言われるほどには、民間人が常に厳しい競争をフェアにやっていて政治の世界は遅れているとは僕は思わないです。

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藤田 僕は「政治の世界が遅れている」と思いますね。民間企業で確かに上場企業でも長く居座る経営者がいるのは、その人の支配する能力が相当高くて、内部を“制圧”できている面もあるのかもしれません。一方、政治の場合は個々のパーソナリティーの問題というより構造的に新陳代謝しづらくなっていると思います。

 一応、憲法で国会議員は「全国民を代表する」と規定されているものの、議員が票を入れた組織や団体の代弁者になってしまって、その人たちが要求する方向に偏ってしまうことが連綿と続いている。それで既得権がガチガチに守られ、規制が変わらず、新規参入できなくなってしまう。ここ最近、再燃しているタクシー業界とライドシェアの問題がまさに典型的です。あれも自民党でタクシー業界に支援されている議員がたくさんいるから、ライドシェアが進まないわけですね。

田端 既得権者って時代劇の悪代官のように国民の知らないところで私腹を肥やしている人たちもある程度いるのでしょうが、日本の社会構造が成熟化していてある意味、多数派が“既得権者”になっている側面もあって、衆目一致するような悪代官みたいな人(笑)って実はそんなに多くないのではないでしょうか。

藤田 ライドシェアで言えば、タクシー業界の人たちが自分たちの利権を守ろうと必死になるのは別にいいと思うんですよ。彼らには彼らの「正義」がありますから。

 では、運転手の人手不足を補うのにどうしますかとなると、結局いまの政府与党から出てくるのは、タクシードライバーの免許の年齢上限を75歳から80歳に引き上げるっておかしな話になる。これって同じ政府内で、警察庁が高齢ドライバーの運転免許を厳しくしているのと矛盾するじゃないですか。もはや政治構造の問題なんですよね。