まず、筋肉が発達するときのストレッサーとして一般的に重要なのは、「機械的物理的ストレス」です。
一般的なウエイトトレーニング、すなわち1RMの70~90%の重量で行うヘビーなトレーニングは、まさに筋肉に機械的物理的ストレスを与える作業になります。従来は、これがバルクアップ(筋肥大)を実現するためのトレーニングの常識でした。
「重いウエイトを使えば使うほど、
筋肉は大きく、強くなる」……×
しかし最近になって、軽い重量でのトレーニングも、同じように筋発達を促すことが判明しました。
もともと軽い重量で多くの回数のトレーニングを行うと、細胞内にあってエネルギーを作り出すミトコンドリアを活性化させ、筋持久力が高まることはよく知られていました。
それとともに、1RMの30~40%程度の重量で多くの回数をこなすことにより、筋肉内に水素イオンやアンモニアなどの疲労物質が蓄積し、同時に、酸素やATP、クレアチンリン酸の不足、活性酸素の発生などが起こります。このような筋肉内の環境悪化が、筋肉に「化学的ストレス」を与え、筋発達を促すことがわかってきたのです。
筋肉は、筋タンパク合成酵素が活性化して、筋肉のタンパク質が増えることで発達していきます。その際、物理的刺激・化学的刺激のどちらであっても、筋タンパク合成酵素を活性化させることが明らかになったのです。
腕立て伏せ(プッシュアップ)を例にとりましょう。トレーニング初心者でギリギリ10回くらいしかできなかったとします。このような場合は、自体重(自重)による腕立て伏せ10回でも、その人にとってはヘビーな負荷(1RMの75~80%程度)になります。
この場合は、「物理的なストレス」を筋肉に与えていることになります。
いっぽう、トレーニング経験者であれば、30回くらいはできるかもしれません。10回やった時点ではなんということはなく、物理的ストレスはそれほどかかりません。でも、正しいフォームで腕立て伏せを行えば、たいてい20回くらいからキツくなり、30回の時点では筋肉がパンパンになっているはずです。