その動作は極めて巧妙。ヨーロッパでは速度制限の設定が現実の交通の流れに即していることもあって、ドライバーにほとんどストレスを与えることなく車速をコントロールしてくれる。さらにアクティブ・レーンチェンジ・アシストをオンにすると、高速道路で遅いクルマに引っかかったとき、システムが追い越しを提案。たとえドライバーがこの提案に応えなくても、システムが安全と判断すると自動的に追い越し車線に移動し、追い越し後は走行車線に復帰してくれる。
ただし、アクティブ・レーンチェンジ・アシストの機能がフルに発揮できるのは、現時点ではアメリカとカナダだけ。ヨーロッパでは追って導入されるようだが、日本仕様はドライバーがウインカーレバーを操作して追い越しを許可しない限り、自動的に車線変更を行うことはない見通しだ。
このあたりは日本の道交法なども関係する話だが、レベル3やレベル4などの自動運転には積極的に取り組む一方で、速度制限規制が相変わらず実態にそぐわない日本の行政に疑問を抱かずにはいられない。このままいくと日本は交通規制の面でもガラパゴス化が進み、海外で開発された最先端の運転支援機能は日本では役に立たないという事態になりそうで怖い。
足回りが絶品
新型Eクラスの仕上がり
新型Eクラスの魅力は運転支援システムだけではない。試乗車の多くはエアサスペンションを装備していたが、穏やかにフラットな姿勢を保ちながら路面からのショックを的確に吸収してくれる足回りは絶品だった。安定性に優れるハンドリングはワインディングロードでも機敏な反応を示してくれたほか、2LディーゼルのE220dを含め、4気筒エンジン中心のパワートレーンも必要にして十分なパフォーマンスを発揮してくれた。
BEVの普及に弾みがつき、クルマの電子制御化やソフトウェア化が急速に進むいま、私自身が“クルマの本質的な価値”と考えるシャシーやパワートレーンの改良にも積極的に取り組むメルセデスの姿勢に、改めて深い共感を覚える新型Eクラスの仕上がりだった。
(CAR and DRIVER編集部 報告/大谷達也 写真/Mercedes-Benz)