韓国のハロウィーン商戦は縮小化
街中でもムードは感じられず

 昨年の群集事故が起こるまでは、韓国でも子どもや若者を中心に、ハロウィーンのイベントが盛んに行われていた。例えば、子ども向けの英語塾などで子どもたちがハロウィーン用の衣装に身を包んでゲームをしたり、お菓子をもらったりといったハロウィーンパーティーがあちこちで行われていた。

 また、毎年10月になるとデパートやマート(日本の大型スーパー)、コンビニ、ダイソーなどではハロウィーン関連グッズが販売される。テーマパークやホテルなどレジャー関連施設でもハロウィーンイベントが開催され、この時期の韓国は、日本に負けず劣らずハロウィーンムード一色という感じであった。

 しかし、昨年の事故によって韓国内のムードは完全に一転した。今年は10月になっても街中でハロウィーンを感じさせるようなものがほとんど見当たらない。一部の店舗ではハロウィーン関連の商品を置いているものの、かなり限定的で、昨年までとはまったく状況が異なる。やはり群衆事故は韓国に深い影をまだまだ落としているといえる。

 こうした状況を、韓国メディアが報じている。事故から1年、今年は流通や外食業界の多くがハロウィーン関連の企画を大幅に縮小していること、今後も「ハロウィーン商戦の縮小化や廃止を含めた見直しを進めていく考えがある」といった記事が複数出ている。

 秋から冬にかけては、日本と同様、韓国もイベントシーズンである。ハロウィーン、クリスマス、バレンタインデー、ホワイトデーのイベント商戦は韓国でも定着していた。

 これらのイベントのうち、韓国でハロウィーンが定着したのはこの15年ほどで、クリスマスなど他のイベントに比べると歴史が浅い。皮肉なことに、韓国におけるハロウィーンは群集事故が起こった梨泰院周辺から広まっていったという背景もある。梨泰院は、米軍基地や各国の大使館が多く所在し、古くから外国人が多く行き交う国際色豊かな街であった。それが2000年代以降、クラブやバーなど若者向けの歓楽街として変貌を遂げ、「外国人の街」から「若者の街」になったのである。

 中年以上の世代はハロウィーンと言われてもピンと来ない人も多く、若者の間でなぜ急速に広がっていったのか理解しがたいという印象を持つ人が多かったのも事実である。梨泰院の事故によって、韓国でのハロウィーンは「痛ましい事故の日」というイメージが浸透した。今後もこのまま、盛り上がることなくひっそりとしていく可能性が高い。

 とはいえ、今年のハロウィーンに梨泰院を訪れる人がゼロになるという保証はない。ソウル市では監視カメラを増設しているほか、10月25日、ハロウィーンを想定した警備訓練を行った。今年の期間中は、監視要員を増やし、交通規制やパトロールを強化する方針だという。