これまで日本の投資家にはなじみが薄かったのが、デリバティブ(金融派生商品)の一つである「オプション取引」だ。日本ではいまだに「デリバティブ=悪」という認識も根強いが、世界のリッチな人々は、投資の際にオプション取引を当たり前のように使いこなしてきた。実は今年、これを実現するサービスが国内でも続々と始動中。特集『富裕層がこっそり教える 狙い目&穴場 運用術』(全16回)の#9では、そんなオプション取引の要諦について、具体的な二つの戦略を中心に解説する。(Oxford Club Japanチーフ・ストラテジスト 志村暢彦)
ついに「オプション取引」本格始動!
あなたもできる“万能”投資術
コロナ禍のさなかに一時、投資大国の米国で一世を風靡した投資アプリ「ロビンフッド」をご存じだろうか。同サービスを展開するロビンフッド・マーケッツは、新型コロナ対策の給付金を受給した個人投資家を獲得し、瞬く間に成長を遂げた。
そして、米国でロビンフッドのような高成長を見せた“黒船”ウィブル証券が今春、ついに日本へ上陸した。7月には、日本で“ある取引サービス”の取り扱いを開始。同時期に、オンライン証券会社の雄、インタラクティブ・ブローカーズ証券も、日本の口座であるサービスを始めた。
両社が今夏、そろって日本の投資家を対象に始めたサービスとは、「米国株の個別株オプション取引」だ。“投資の神様”と呼ばれるウォーレン・バフェット氏をはじめ、多くのプロ投資家が当たり前のように長期投資で活用するデリバティブ(金融派生商品)である。
日本でも、“オプション取引”と聞けば、概念を知っている人は少なくないかもしれない。だが、実際にその中身を的確に理解している投資家はまれだろう。
何しろ、これまで日本ではデリバティブ取引の規制が広範になされ、証券マンや銀行員、金融当局者などでも、個別株のオプション取引を実際に行ったことのある人はほぼ皆無。経験豊富な金融マンでも、「デリバティブ取引=危険」という偏見や、歴史上の出来事などから固定観念を振りかざし、悪玉論で語ることもしばしばである。
結果として、投資において「リスクを取る」だけでなく「リスクを低減」したり、「自分好みにコントロール」したりして、“万能サービス”のように扱えるはずのオプション取引が、日本では広まってこなかった。一方、金融リテラシーの高い世界の富裕層は、このような取引を当たり前のように使いこなす。
では、個別株のオプション取引により、投資家はどんな効果を期待できるのか。端的に言えば、「株式市場が短期的に多少下落したとしても、コツコツとプラスのリターンを積み重ねる」取引が狙える。
それだけでなく、オプション取引は組み合わせ次第で、ありとあらゆる投資ニーズを形にできる。
まだまだ認知度は低いが、長期目的の資産形成において、初級・中級レベルの投資家が、リスクを抑えながら行う投資にもフィットするものである。
次ページでは、そんなオプション取引について、具体的な「2つの戦略」を明らかに。使い方次第で“万能”の投資ツールにもなり得る同取引の実践法を解説する。