本日のテーマは、「重い“接待と仕事ディナー”を軽くする技術」です。
超ミニマル・ライフとは、「どうでもいいことに注ぐ労力・お金・時間を最小化して、あなたの可能性を最大化する」ための合理的な人生戦略のこと。四角大輔さんの新刊『超ミニマル・ライフ』では、「Live Small, Dream Big──贅沢やムダを省いて超効率化して得る、時間・エネルギー・資金を人生の夢に投資する」ための全技法が書かれてあります。本書より、仕事ディナーの前倒し術と、疲れるだけの二次会を回避する技についてご紹介します。

重い 「接待と二次会」を軽やかにかわすお断り術Photo: Adobe Stock

夜が遅い業界で試みた前倒し術

 若い世代には特に、接待や仕事ディナーを不得意とする人がとても多い。何を隠そう、人付き合いが苦手な筆者は、会社員時代の最大のストレスが夜の会食だった。

 なぜなら、日本は「二次会」や「カラオケ」というカルチャーを生み出した国であり、接待のための会食とは「夜遅くまで行うもの」「目上の人に次の店に誘われたら断れない」という独特の慣習があるからだ。

 日本では、平日のディナーを仕事の会食に回す人が結構いる。そういう習慣は、暴飲暴食を誘って帰宅を遅くさせ、朝の目覚めも日中のパフォーマンスも最悪という日を増やしてしまう。

 20代の駆け出しの頃、会社の先輩から「社会人として必須」だとして接待会食を仕切らされていた時期があった。お酒が弱かったため辛くて、どうすれば翌日に疲れを残さないで済むかを必死になって考えた。

 日本では、夜の会食は早くても19時からというのが常識。筆者がいた、クリエイティブ産業やエンタメ業界なら20時開始なんて当たり前で、21時なんてこともよくあった。

 夜が遅い日本では、18時開始とするだけで混雑を避けられたり、有名店の予約が取りやすいことを多くの人が知らない。そうやって当時は、先輩や接待相手が喜ぶような人気のお店や話題のお店を見つけては18時から押さえていた。

 目的は少しでも早く帰るためだったが、結局はみんな遅れてくるため18時に始められることはほぼなかった。お店からもクレームが入るし……この前倒し作戦は断念することになる。

わずか30分がもたらすアドバンテージ

 仕事で成果を出せるようになり、自分のペースで仕事をやれるようになった30代半ばの頃、20代では形にできなかった前倒し作戦に再び挑むことになる。

 義務ではなく、「この人とはゆっくり食事しながら語りたい」と心から思える仕事の関係者をディナーに誘うようになった。

 その頃は、あらゆることを前倒しにして大きな手応えを得ていたので、さらに早くて17時半スタート。わずか30分だが、この時間から食べ始めるメリットは枚挙にいとまがない。

○ベストな席に座れる可能性が高い
○店内が静かでリラックスできる
○早い時間の少量のお酒は睡眠に悪影響を与えない
○入眠までに飲食物の消化が完了し、上質な睡眠をとれる
○まだ明るい時間から飲む泡のお酒は最高!

 相手が仕事関係者だとしても、興味がある人との会食だから通常の接待で感じる重さはない。楽しく過ごせれば会食がそのまま、仕事を忘れて自分を取り戻すセルフケアタイムになる。

 20時には切り上げられるので、帰宅してゆっくり入浴する時間も確保できる。そんな夜は当然、睡眠の質も高い。

 重量級だった仕事ディナーという業務が結果的に、脳疲労とストレス、さらに肉体疲労の解消につながったのだ。しかも自腹が痛まない会社経費だから痛快である。

17時半スタートを可能にする裏技

 だが、これにはいくつかのテクニックが必要だ。

 まず17時半から空いている良質なお店を押さえておく必要がある。多くのお店が18時オープンだが本気で探せば必ずある。

 もし18時開店のいいお店があった場合、まずしばらく通って常連になり、タイミングを見てこう相談してみよう。

「開店の準備で騒がしくても一向に構わないので、30分だけ早く入れてもらえませんか」
「いい席は不要で、外のテラスか入り口ドア近くのような邪魔にならない場所で大丈夫です」
「つくり置きの前菜を少しとお酒を一杯だけ注文できませんか」

 会社員時代、こうやって筆者は常時2~3店舗確保していた。

 だが会食の相手が、早い時間からのディナーに当惑することもある。その時のキラーフレーズを伝授しておこう。

「早い時間から、いいお酒といいつまみを出してくれる馴染みの店があるんです」
「たまには世間が働いてる早い時間に乾杯しませんか」

 相手に「いつもと違うディナーだ」「たまには特別な雰囲気での食事もいいな」と思ってもらうのが狙いである。

 つまり相手は、いつも以上に早く仕事を終わらせてオフィスを出る必要があり、毎日の退屈なルーティンから外れた「非日常な気分」で来てくれることになる。

 結果として、相手の「記憶に残る有意義なディナー」にできる可能性が高くなるということだ。

ハードルの高さ以上のメリットがある

 わざわざ人を誘って食事を共にする目的は、「ただ一緒にご飯を食べる」だけじゃない。

「相手のことを知り、自分のことを知ってもらう」「会食を経て、より親密になる」といったことが狙いでセッティングするはず。

 だから、相手が「前倒し」を受け入れ、あなたを特別扱いしようと判断した段階で、会食ディナーはもはや「成功している」といえるだろう。

 ちなみに、フリーランスとなってからは17時スタートを基本としている。とはいえ、会食の時間は自分の一存では決められないし、相手が組織勤めの場合はそうスムーズにはいかない。

 日本では──17時だろうが18時だろうが──19時より早い前倒しディナーを実践するには高いハードルがある。

 しかし、あきらめずにこのスタイルを続けていると「◯◯さんとの食事はいつも早い」と徐々に慣れてくれるようになる。さらに「あの人との早い時間からのディナーはいい」と喜んで予定をやりくりしてくれる人も出てくる。

 これは机上の空論ではなく、筆者が実証済みだ。

 相手が「前倒しディナーは特別」と考えてくれる利点は、あなたの想像以上であると伝えておきたい。

一歩先を行くワークスタイルの国々

 ちなみに、ニュージーランドやフランス、北欧諸国などの働き方先進国では、ディナー前に「軽く1杯+フィンガーフード」という習慣がある。

 終業時間前の16時台に、同僚や取引先と近くのパブに行き、ブレストのようなラフな会合をしたり、昇進や結婚などのお祝いを口実にそういった懇親の場を持つのだ。

 だが2時間、3時間とダラダラ飲むことは決してない。短いと30分、長くても1時間で終わり、飲み会疲れなど一切なく、みんないつも通り家族とのディナーのために家路につく。

 人によっては最初の乾杯だけ参加して、文字通り一杯だけ飲んで15分で出る人もいる。当然、そういう人を白い眼で見る人間などいない。とにかくカジュアルで自由なのである。

 これは「チームワークや懇親のため」ということもあるが、彼らは体験的に、早い時間の軽いお酒はリラックス効果が高く、脳疲労やストレス解消につながることを知っているのだ。

 なお、これらワークスタイル先進国にも当然、アフター5の接待や仕事ディナーは存在するが「二次会は常にセット」という慣習は当然ない。

 そして、17時や18時スタートの会食が当たり前のようにある。だからか、酔ったスーツ姿のビジネスパーソンが、夜中にフラフラ歩いているという光景に遭遇することは滅多にない。

 こういった国々の街角で夜中に泥酔しているのは、アルコール依存症の人、素行が悪い人、血気盛んな若者、そしてお祝いや特別なパーティで盛り上がりすぎちゃった人たちくらいなのだ。

疲れるだけの二次会を回避する技

 念押ししておくと、自身で会食をセッティングする場合──お祝いやサプライズといった特別な時を除いて──決して「二次会」を組み込まないこと。

 もし当日、相手から二次会に誘われたとしても、確固たる意志を持って柔和な表情と丁重な口調でお断りしよう。たとえ人生の先輩だとしてもだ。

 事前に、相手が「二次会好き」だとわかっている場合、筆者はいつも前もって「翌朝締め切りの重要な仕事があるので、一軒目で失礼させていただきます」と伝えるようにしておく。

 これまでの人生で、二次会が生産的だったり有意義だったことなんてほとんどない。

「いい雰囲気のまま、この流れでこの人ともっと語りたい」とこちらから誘ったり、そう思う相手からの誘いに乗ったこともあるが、そんなことは1年に一度あるかないかだ。

 とはいえ、この国にはまだ「二次会はマスト」と思い込んでいるブーマー世代が現役に多くいる。彼らが一次会で酔ってしまうと、「行けない」と伝えてあっても悪気なく誘ってくる。

 そんな時のために、いくつかの効果的な「ゴメンナサイの常套句」を伝授しておきたい。

①まずは躊躇せず「お礼と謝罪の言葉」を述べよう
「お誘いありがとうございます。とてもうれしいのですが、申し訳ありません」

②「明朝に予定がある」という作り話をすかさず口にする
「明日朝の会議に必要な資料が完成しないまま会食に来てしまいました。早朝から作業をしないといけないため、今日は早めに失礼します」
「明日とても重要なプレゼンがあって、今日は早く帰宅してそれに備えないといけないんです」

③丁寧に頭を下げ、真剣な面持ちで再び謝罪の言葉を伝える
「本当に申し訳ありません」

 もし、それでもしつこく誘う人がいたら、筆者は二度とその人と食事に行くことはしない。

 ②はあくまで、筆者が実際に使って機能した「自分の身を守るための爽やかなウソ」だ。

 ぜひ自分流にアレンジして、常套句を2つほど用意しておき、迷わず即答できるように備えておこう。こういう時に少しでも「ためらい」を見せると押し切られる可能性があることは、もうあなたは理解できるだろう。

 日本社会では時に、小さなウソを活用しないと自分のことを守り切れないこともあると覚えておこう。

若い世代への提言

 ただ日本では、若い人が目上の人との会食でこの「前倒しディナー」を提案するのはやはり容易ではない。だから、いくつかのアドバイスをしておこう。

①最初は友人やパートナー、同世代の仕事仲間、気心の知れたクライアントを相手に、恐る恐る実験だと思って試してみる

②上の世代が若い世代に対して持っている「お酒を好まない」「付き合いが悪い」というイメージを逆利用して、自分のキャラクターとして活用してしまおう

③若い頃から前倒しディナーを実践することで、成功体験が積み重なり、だんだんと「あの人との会食はいつも早く始まり、早く終わるからいい」と、あなたにポジティブなイメージを抱いてくれるようになっていく

 もし次の会食の予定があるなら、まずはそこからチャレンジしてみよう。今からトライアンドエラーを重ねていけば、いつか必ず軽快に実行できるタイミングが来る。

 それは、筆者の人生で実証済みなので信じてみてほしい。

 2020年からのコロナ禍を受けて、いよいよ組織人にもワークスタイル自由化の波がやってきた。

 もしあなたが、フレックス制度やリモート勤務、ハイブリッド勤務(在宅とオフィス勤務の組み合わせ)を選べるなら、フリーランスに近い自由度を手にしていることになる。

「前倒し術」は、ただの小手先のハックスじゃない。「自由で幸せな生き方」を実現するための最初の重要なステップなのである。

(本記事は、『超ミニマル・ライフ』より、一部を抜粋・編集したものです)