人生100年時代、お金を増やすより、守る意識のほうが大切です。相続税は、1人につき1回しか発生しない税金ですが、その額は極めて大きく、無視できません。家族間のトラブルも年々増えており、相続争いの8割近くが遺産5000万円以下の「普通の家庭」で起きています。
本連載は、相続にまつわる法律や税金の基礎知識から、相続争いの裁判例や税務調査の勘所を学ぶものです。著者は、相続専門税理士の橘慶太氏。相続の相談実績は5000人を超えている。大増税改革と言われている「相続贈与一体化」に完全対応の『ぶっちゃけ相続【増補改訂版】 相続専門YouTuber税理士がお金のソン・トクをとことん教えます!』を出版する。遺言書、相続税、贈与税、不動産、税務調査、各種手続という観点から、相続のリアルをあますところなく伝えている。2024年から贈与税の新ルールが適用されるが、その際の注意点を聞いた。
絶対知っておくべき、2024年からの新ルール
2024年1月1日から、贈与税の取り扱いが大きく改正されます。
これまでの税制では、生前贈与をしてから3年以内に相続が発生した場合には、その贈与は「なかったもの」とみなし、相続税の計算をしていました。いわゆる「3年ルール」です。2024年1月1日からは、これが「7年ルール」へと引き延ばされます。
たとえば、2024年1月1日に贈与を行った人が、2027年7月1日に亡くなったとしましょう。これまでの「3年ルール」であれば、3年遡った2024年7月1日までが相続税の対象となる期間であり、2024年1月1日分の贈与は対象外となるはずでした。しかし改正が施行されると、2024年1月1日分の贈与も相続税の対象となるのです。つまり今回の改正は、実質的には「増税」といえます。
贈与を考えている方にとって、7年先の自分の健康状態などわからないものです。そのため、これから年末にかけては、「3年ルールが適用されるうちに贈与を」という駆け込み贈与が多く起こると予想されます。
「いくら贈与するか」より、「誰に贈与するか」が大切
もちろん、恩恵の大きいうちに贈与を済ませておくのは合理的であり、税理士の視点から見ても賛成です。とくに財産額が数億円に上る富裕層の方については、今年のうちに多額の贈与をしておいたほうが節税効果も高くなります。
ここで大切なのは「誰に贈与するか」という視点です。