賃金は実質ベースでは増えていない
そろそろマイナス金利政策は解除か

 そのため、小幅な反発があったとしても、円はドルなどに対してじり安基調で推移する可能性は高い。円安は、主要企業の業績をかさ上げした。一方、輸入物価の押し上げによるコストプッシュ型の物価上昇にもつながった。

 わが国企業は人手不足に対応するために賃上げを余儀なくされている。そのため、賃金は上昇したものの実質ベースでは賃金は増えていない。円安による国内の物価押し上げという負の影響は深刻だ。

 その裏、10月の決定会合で日銀は、24年の消費者物価指数(除く生鮮食品)の上昇率を2.8%に引き上げた。7月の予想は1.9%だった。日銀の物価安定の目標は2%である。10月の決定会合で10年金利の1%超え容認を発表した後も、円売りは加速した。イールドカーブコントロール政策の微調整により円安圧力を抑えることは難しい。

 為替レートの変化には政策金利の水準がより大きく影響する。となると、日銀がマイナス金利政策の解除を検討する可能性は高まる。10月下旬にかけて主要投資家の間では、早ければ12月、あるいは24年4月までに日銀がマイナス金利政策を解除するとの予想が増えている。

 マイナス金利政策が解除されると、国民生活にもさまざまな影響が出る。一例として、短期の金利に連動する変動型の住宅ローン金利が上昇するだろう。現在、住宅ローン利用者の約7割は変動金利で住宅ローンを借りている。

 理論的に、変動型の住宅ローン金利は、政策金利に連動しやすい。政策金利がマイナス0.1%から0%に上昇すると、変動型の住宅ローン金利も0.1ポイント程度上昇するだろう。異次元緩和の追加修正によって長期金利が上昇し、固定型の住宅ローン金利も追加的に上昇する可能性もある。

 それによって、個人消費は一時的かつ小幅に減少するかもしれない。中小企業の借り入れコストも上昇する可能性がある。一方、国債の流通利回りが上昇するなどして、個人や機関投資家の資金運用の選択肢が増えることも考えられる。